理念とコンセプト遊び心

未来予想図Ⅱ~溶岩焼~

2023年の春、HICOを訪れたあるカップルの話 Vol.4

●これまでのあらすじ(Vol.1、Vol.2、Vol.3)

2023年の春。

東京オリンピックも終わり、3年が経った頃のこと。

これは、未来のHICOを訪れたあるカップルの話です。

お客様視点で、HICOはどんなレストランになっているか、想像してみました。

カルツォーネの次は、溶岩焼!

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私たちは再び庭にいた。

デッキチェアに座って、同じ火を見ていた。

二人の間にはイタリア・トスカーナの赤ワイン。Chianti Classico(キァンティ・クラッシコ)。オーナー曰く、「400年も前からステーキにはこのワインと決まってます」とのこと。

失礼します、といってサービスの女の子が注ぎたしてくれた。

「ボトルの持ち方も教わってるんですか?」

一瞬、考えるそぶりをして彼女は微笑んだ。

「はい、指の添え方まで」

彼の方にも注ぎたした。その仕草は、その年代の女の子にしてはあまりにも優雅に見えた。

「ソムリエの資格とか、持ってるんですか?」

「勉強してるところなんです。でも、今はソムリエの資格を持っていても価値が低いから、プラスアルファを考えないとだめだって言われてます」

「プラスアルファ?」

「はい、人に負けない専門性を最低2つ以上、今のうちに身につけておくこと。それと、マネジメントについて勉強すること。これをしょっちゅう、言われます」

「なるほど・・・」

オリンピックが終わった頃、たくさんの失業者が出た。これまで人が担ってきた仕事を、ロボットが人の倍以上の生産性と正確さでできるようになってしまったからといわれている。

いなごの大群のように。とテレビでコメンテーターが言っていた。いなごが通ったあとの畑は全部食べ尽くされて、ほとんど何も残らないそうだ。それが東京オリンピックだったと。

その反動はちょっとした混乱を生んだ。私はちょうど大学を卒業する頃で、これから一体、どう変わっていくのか不安でたまらなかった。

隣を見ると、心地よさそうに目を閉じている彼。

「そろそろ、オーナーがお肉を持ってくると思います」

彼女はそういうと、中へ入っていった。

「お待たせしました」

オーナーがお肉を持ってきた。

「十分、温度は上がってますので、そのままジューッと焼いてください」

骨付のTボーンステーキ。サーロインとフィレが同時に味わえる。一切れずつカットはされているが、骨のところでまだつながっている。2人分とはいえ、結構ボリュームがあった。

焼くのは鉄板ではなく、溶岩らしい。私たちの前にひょうたんのような形をした黒いプレートがあるがそれが溶岩だったようだ。

オーナーによると、溶岩焼は遠赤外線で焼くので中まで熱が均一にはいり、余分な脂は溶岩が吸収してくれるとのこと。石窯で焼くピッツァのように、表面はこんがり、中はふっくらと、しかも余分な肉の水分が抜け、旨みが凝縮するという。

「よし、いくか」

彼が専用のトングで、肉を溶岩プレートに置いた。とたんに美味しい音、立ち上る香。もうこの時点でわかる。絶対、美味しい。

「なんか、五感を刺激されるな」

彼が言った。言う通りだ。全身で、味わっている気がする。

「もしかしてさ、原始時代の記憶なのかな。外でこうやってお肉を焼いてる瞬間て、他に代えがたい幸福感ない?」

「いえてる」

「これもオーナーの狙い?」

「ああ、そういえば、書いてあったな、、、人は火を見ていると落ち着く効果があるらしい」

「たしかに、落ち着くね」

「それと、マズローのなんだかんだって理論もあったな、、、」

「マズロー?」

彼はとぼけた顔をして首を傾げた。忘れたんだろう。

「まあいっか、本読も」

空を見上げると星がいくつも見えた。数えられるほどの都心とは違う。

ふいに、幸せだなあと思った。

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