理念とコンセプト遊び心

未来予想図Ⅱ~お土産~

2023年の春、HICOを訪れたあるカップルの話 Vol.5

●これまでのあらすじ(Vol.1、Vol.2、Vol.3、Vol4)

2023年の春。

東京オリンピックも終わり、3年が経った頃のこと。

これは、未来のHICOを訪れたあるカップルの話です。

お客様視点で、HICOはどんなレストランになっているか、想像してみました。

ついにHICOでの夜もフィナーレを迎えます。

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私たちはお肉を食べ終えた後も、しばらく庭にいて、ちらちらと燃える火や、星や、ライトアップされた木々をぼんやり見ていた。二人とも満ち足りた気分でいることがお互いにわかっていた。時おり吹き抜ける風がすこし火照った頬に心地よかった。

「さっきオーナーがさ」

静かに彼が話し始めた。

「どんなに料理が美味しかったとしても、食べてる雰囲気が悪かったら美味しいとは思えないって」

「うん、いってたね」

「ここんとこさ、一緒にメシ食べる余裕もなかったもんな。今日はほんとうによかった」

「ありがとね、連れてきてくれて。すごい楽しかった」

背後でドアの開く音がして「よかったらこちらまで、デザートとコーヒーをお持ちしましょうか?」と女の子が声をかけてくれた。

「せっかくなんで、お願いしようかな」

と彼は答えた。

コースも終わろうとしている。耳をすますと、水の流れる音が聞こえてきた。川が近いのだ。

「ひとつのレストランでこれほど濃密な経験できるところってあまりないよね」

私はあらためて、レストランHICOでの時間を振り返っていた。

「そうかもな」

彼も何かをじっくり考えているようだった。「本に書いてあるんだけど」

「うん」

「100年続くレストラン創りがスローガンなんだって」

「100年続くレストランか・・・壮大だね」

「どうなってるんだろうな、100年後」

「10年先もわかんないよ」

「それもそうだな。だけど、、、」

彼は空を見上げて言った。「何十年たっても、こうしていようぜ」

オーナーと対応してくれたサービスの女の子は私たちが角を曲がるまで、ずっと見送ってくれた。つかず離れず、おしつけがましくなく、さりげなく。私たちにはちょうど良い、距離感だった。

「オーナーがくれたお土産、開けていいかな」

「うん、気になるな」

カルツォーネ専門店HICOと印字された手提げ袋に、小包が入っていた。

「これはささやかなお土産です。お二人で食べてください」

とオーナーは言った。

「わあ可愛い!」

箱を開けると、ハート型の小さなカルツォーネが2つ入っていた。チョコレートが練り込んであるのか黒っぽい色をしている。

カードが入っていた。

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本日はお越し頂きありがとうございました。

感謝を込めて、仲睦まじいお二人に贈ります。

”Calzone Felice(幸せなカルツォーネ)”

いつまでも笑顔でいられますように。

レストランHICO

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「すごい、直筆だよ」

「なんか嬉しいな」

カードの裏は、携帯をかざすと「Calzone Felice」の制作秘話へとリンクするようになっている。

やってみて驚いた。

<<未来予想図Ⅱ 2023年の春、HICOを訪れたあるカップルの話>>

・・・これって私たちのこと!?

「さっそく、いただこうかな」

彼は一口でほおばった。もぐもぐしながら、うまいと言っている。

もう出会って5年になる。その笑顔は全く変わらない。

車のルーフからの星を見ながら、私は思った。

きっと何年たってもこうして変わらぬ気持ちで、過ごしていけるんだろうな。

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