料理とワインについて

カレッティエーラに込められた優しいエピソード

パスタ料理カレッティエーラ(車夫風)

カレッティエーラというパスタ料理をご存知ですか?この料理には、こころ温まるストーリーがあるのです。

ローマ近郊の片田舎で暮らしていた年老いた車夫の話。

車夫というのは、今で言うと、タクシーの運転手さんのようなものです。ただ、人力車のような手押し車で人や荷物を運びますから、かなりの重労働だったと思います。彼は来る日も来る日も、休みなく働いていました。手は岩のように固く、ごつごつとして、靴の底は毎日縫い直さないと、まともに歩けません。顔は浅黒く、目尻には深い皺が刻まれています。

ある冬の寒い日

彼は品の良い婦人を乗せて、幾里ものあいだ、車を引いていました。山野を駆け抜ける冷たい風はむきだしの手と、鼻の頭を赤く染めていきます。

小さな町にさしかかった時、ふいに「ちょっと待っててくださいね。」といって、婦人は車を止め、町の方に向かっていきました。かじかんだ手に息を吹きかけながら待っていると、二十分もかからず、婦人は戻ってきて言います。

「ありあわせの材料でしか作れなかったんですが・・・」

差し出されたのは、まだ湯気のたっている具だくさんのパスタ。ツナ、ベーコン、きのこ、トマトがふんだんに入っています。そのボリューム感と、風の吹き荒れる冬道にひときわ際立つ、あたたかな香りといったら!

「さあ、冷めないうちにどうぞ。」

・・・このときの車夫の気持ちが想像できますでしょうか。冷え切った彼の身体は、とたんに優しさに包まれ、深く刻まれたしわの隙間から、浅黒い頬を伝い、一筋の涙が流れたのでございます。

カレッティエーラとは、そう、イタリア語で「車夫風」という意味です。

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ありあわせの材料とは?

パスタは具だくさんにすると、焼きそばのように妙に庶民的になります。レストランで洗練されたイメージの一皿にするには、目に見える具は3種類まで。と私は決めています。

(ただし、魚貝のトマトソース、ペスカトーレだけは別です。あの料理は豪快に魚貝を使用することに意味のある料理ですから。)

このカレッティエーラも例外ではありません。

「あり合わせの材料で」と婦人は言いましたが、それは老人への気遣いであったと思うのです。老人が気兼ねなく、食べれるように。実際に作ってみるとわかります。簡単に言えば、ツナ、ベーコン、きのこのトマトソースです。

この組み合わせは旨みの相乗効果で、互いの旨さを引き立たせるものなのです。ツナに含まれるイノシン産、ベーコンの燻製し熟成されたまろやかな脂の旨み、きのことトマトのグルタミン酸。それぞれの旨み成分は単体で味わうよりもずっと、倍増して感じられます。

そしてなんといっても、このようにボリュームをつけることで、見た目の満足度、温かみはもちろんのこと、冷めにくくもなるのです。

ストーリーの効果

寒い中、手も鼻の頭も真っ赤にさせながら何時間も車を引く老人には、しみわたる料理だったでしょう。一生忘れられない、美味しい記憶であったかもしれません。

ツナ、ベーコン、きのこのトマトソース。レストランで提供するには安っぽく感じるのが正直なところです。でも、カレッティエーラ(車夫風)というと、何物にも代えがたい心温かな一皿になる。

子供のころ、お腹を空かせて帰ってきて、夕ご飯までは時間がある時、ありあわせの材料で作ってくれた母親のチャーハン。そういえば、旨かったよな、、、と思いだしました。

料理にストーリーが加わると、記憶に残る美味しさになりますね!

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