魚を究める

イカを科学的に調理する

特殊なたんぱく質熱変性のメカニズムを知る

イカはお好きですか?

私はある時を境に、大好きになりました。ある時、というのは、函館で何気なくイカを食べたときのことです。

「あれ、こんなに、イカって旨かったっけ?」

函館名物の踊り活イカではなく、普通に刺身で食べたイカです。季節は11月でした。

驚くほど身が甘く、噛むほどに旨いが出てくる。イカの味が濃いから、醤油はほんの少しつければ十分。余韻も嫌な香がなく、ねっとりと残る甘味を日本酒で流し込むと、本当に生きてて良かったとさえ思いました。

イカのたんぱく質メカニズム

イカの筋肉(たんぱく質)は魚とは構造が違います。

熱の加え方によっても、違った変化をするのです。イカは60度を境に、たんぱく質のメカニズムが変わるのです。

一番やわらかい火入れは60度で仕上げること。逆に固くするには80度にします。料理の目的によって、変えればいい。ただ、ペースト状にして、ムースにしたり、つみれにする以外には、柔らかい方が一般的に好ましい食感といえます。

たとえば、シンプルにボイルするとします。100度の沸騰したところへ入れて火を入れる場合、気を付けなければならないのは、ボイルしすぎないことです。イカの品種によっても変わってきますが、5分以上ボイルするのはタブー。

80度前後のもっとも固い状態になり、この固さは、更に熱を入れて25分。細胞が壊れるまで火を入れないと柔らかくなりません。

焼く場合も同様で、5分以上焼くと、固く感じます。ということは、サッと炒めるのが良いのです。

固くなったものを柔らかくするには?

ただ、煮込みにする場合は、25分以上、火を入れると、出汁も出て、柔らかくなり、それはそれでうまくなります。食感も、5分以内の調理と比べ、繊維がなくなり、箸ひとつでホロッと崩れるほどの柔らかさ。

イカの熱変性による、このメカニズムを知っておくと、料理にどう生かせばいいか、わかります。食感は、料理に置いて大事な構成要素ですから。

イカの旨み

さて、私が感動した、函館のイカは何だったのか?

これは生物学的にいっても、旨いのは当然でした。イカと言うのは一年魚です。

函館真イカは品種でいうと、スルメイカ。スルメイカは春に九州で生まれ、北上しながら北海道を通り、オホーツクまで行き、今度は産卵のため、南下を始めます。その時に函館周辺で捕れるのが、ちょうど秋~冬。11月頃です。

産卵のため、エサを活発に食べる時期なので、肝もパンパン、身も肉厚なんですね。子への栄養もいっていない時期なので、スルメイカが最も美味しい時期なのです。だから、素材自体が旨かった。

イカの熟成

もう一点、集魚灯をつけて、函館沖で漁をしたイカ釣り漁船は、早朝、まだ陽も登らぬ午前4時頃、市場へと荷をおろすのです。その日の内には、スーパーに並び、飲食店へ届けられる。だから、スーパーで買っても、鮮度が良い。

ただ、鮮度の良さは美味しい理由のひとつですが、それ以上に大事な要素がある。

それは、熟成です。もともとの鮮度が良いので、一晩、寝かせても十分、刺身でいける。すると、グッと甘味、旨味が増しているのです。

イカの一夜干しが好例です。イカには遊離アミノ酸であるグリシン、アラニン、プロリンが多いので甘味を感じるわけですが、乾燥させるとそれらの成分が増長します。刺身でも、一晩、寝かせると旨くなるのはそういった理由があります。

また、鮮度の良い時の分解されていないたんぱく質は、パリッとして、それはそれで食感が良いのですが、一晩おいて少しずつ分解されていくと、食感も柔らかくなります。

いずれにせよ、函館のイカは最高でした!

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