おすすめワインをご紹介

ソムリエ歴10年あまり。その間は平均して、年間9000種以上のワインをテイスティングしてきました。ワインというのは、農産物なので、ぶどうが収穫された年の出来不出来により、味が大きく変わります。それを知るのは、テイスティングをおいて、他にありません。実際に飲んだことがなければ、わからないのです。今は違う仕事をしていますが、今でも毎晩、ワインは飲み、その色合い、香り、酔い心地を楽しんでいます。

ここでは、シチュエーションや好みに応じて、気まぐれにワインを紹介させていただきました。

※なお、この記事でワインのアフィリエイトはしておりません。

目次

北海道・十勝、町民用ロゼワイン

北海道のロゼワインなんて。と、最初は、ばかにしていました。でも、グラスに注ぎ、何気なく飲んでいると、考えを改めざるをえませんでした。

きっと、野性的な酸味と、野暮ったい雑味、未熟な果実味で、魅力に乏しいのかなと思っていたのです。ところがどうでしょう、チャーミングで、フレッシュな酸味、瑞々しいさくらんぼのような果実の香り、わずかに木の芽のニュアンス。さっぱりと滋味あふれる味わいで、控え目ながら、余韻にトマトにも似た旨み。

驚きました。価格は900円以下です。

チキンカツと相性抜群

ラベルはお世辞にもカッコいいとはいえない、野暮ったさはありますが、全く、飲み飽きせず、食事のお共に最高です。たまたま私はチキンカツと一緒に飲んでましたが、あまりに美味しいので、普段なら2杯に抑えるところ、倍ほど飲んでしまいました。

その名も、町民用ロゼワイン【ザ・いけだ】。北海道池田町のブドウ酒研究所が作っているようです。

日常消費用ワインとして、大活躍しますね。1ケース買っても損はありません。普段の和食によく合うと思います。餃子とか、辛すぎない麻婆豆腐。肉じゃが、ナポリタン。あまり気取りすぎない料理には、抜群に合います。

ただし、このワインは、名前の通り、北海道で売られているワインで、全国流通はしていません。ネットでしか購入できませんが良ければお試しください。

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所 十勝ワイン 町民用ロゼワイン

イタリア・ヴェネト州の白ワイン、モデッロ・ビアンコ・デッレ・ヴェネツィエ

ワイングラスの脚がこんなにも細くて長いのは女性の指先を美しく見せるからだとなにかで読んで、なるほどな、と思いました。

20年前、私はある女性に出会って、彼女の小説を読んで、その、繊細な物語を紡ぐ小さな指先に見とれました。まるでホワイトアスパラガスのように細くて、彼女にそれを伝えると、おにぎりもうまく握れないし、ハンバーグもおっきいの作れないから不便なのよ、と冗談めかして笑ってました。

そして、小ぶりなおにぎりやハンバーグが私のためだけに作られるようになり、学生から社会人として働くようになってから、2人でワインを飲むことが多くなったんです。出会ってから、2年。ワインに飲み方があるとすれば、私たちはきっと、めちゃくちゃだったと思います。赤ワインでも冷蔵庫でキンキンに冷やしたし、ビーフシチューに白ワインを平気で合わせていました。無計画、適当、気分。それが、そのころの私たちの休日のすごし方だったんです。

口に含んだ瞬間、小鹿が駆け抜けたわ、と彼女が言ったのは、ヴェネト州の白ワイン、「モデッロ・ビアンコ・デッレ・ヴェネツィエ」でした。

「奈良公園・・・・・?」

東大寺のお土産物屋さんが立ち並ぶ真向かいに、大きく開けた広場があります。突き進むと新公会堂があって、さらに右手に上ると春日大社へと通じる道に行く。その間を、一頭の小鹿が颯爽とかけぬける映像が頭をよぎったのでした。奈良公園は、私たちがはじめて出会った場所なんです。

この5月で、私たちは20年も一緒にいたのだと気づきました。ワイングラスを持つ彼女の指先は、ペンだけを持てばよかった学生時代に比べると、ややたくましくなり、ささくれもできています。最近では、10センチほどのハンバーグも余裕で焼いてくる。

でも、それでいいんですよね。今や2人の子どもに恵まれ、穏やかに暮らすことが出来ています。彼女は、もう一度小説を書いてみようかな、とこの頃、言っています。

さて、どんな物語が生まれるのかな……。今から、とても楽しみです。

モデッロ・ビアンコ・デッレ・ヴェネツィエ

オーストラリアのリースリング

オーストラリアのリースリングには苦い思い出があって、シニアソムリエ試験の時、ブラインドテイスティングで出たのが、これでした。私はまったくわからなかった。

飲んだことがなかったのです。もう4年前のことですが、専門的なことをいうと、フランスのミュスカデ、と答えました。

印象的なのは、美しく研ぎ澄まされた酸味。攻撃的ですらある、むき出しの酸味で、なんとなく、もののけ姫を思い出したのを覚えてます。

いま飲むと、これがすこぶる美味しい(笑)

ジェイコブス・クリークと言って、オーストラリアワインの先駆者的メーカーのカジュアルワインなのですが、食事にも合うし、後をひく酸味が心地よい。時間がたつと、ふくよかなフルーティーさが出てくるのですが、それも最初の口当たりだけ。

あの、美しく研ぎ澄まされた酸味は、この価格帯でもしっかり感じられます。ぜひ飲んでみてください。普段の食事にもよくあうし、おすすめします。合わせる料理は、魚のフライや、天ぷら、蕎麦なんか最高です。

ピノノワールの魅惑

個人的な好みの話です。

ワインは主に2000種のブドウ品種から作られますが、私がもっとも好きな品種は、ピノノワールと呼ばれる、フランス・ブルゴーニュ地方の代表的な品種です。

ピンノワールは、高貴で気難しい品種といわれ、育てるのも難しいそうです。でも、上手に育てると、人を魅了してやまない奥ゆかしい香りと肉感的な飲み心地の、素晴らしいワインに仕上がります。

ただ、ブルゴーニュの良いワインは、高値です。気軽にのめるものではありません。日常的に楽しむなら、ニュージーランドのピノノワールや、ドイツのシュペートブルグンダー(ドイツでのピノノワールの呼び名)がおすすめです。

カリフォルニアやオーストラリアでも素晴らしいのはあるのですが、総じて、甘みが先だち、即物的な感じで、どうも飲み飽きます。ピノノワールの本質は、飽くことのない芳香性と、奥ゆかしさです。

一見、とっつきにくくても、飲み進めれば飲み進めるほど、虜になってしまう。

そう考えると、ブルゴーニュのピノノワールはやはり、別格です。シャンボールミュジニという、わずか300人弱の人口の小さな村から算出されるピノノワールは、なかでも非常に繊細で、優しく、奥ゆかしいワインが作られますが、それはそれは魅惑的なワインです。

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