魚を究める

感動するほど旨い刺身を提供するには?①

科学的に根拠を求めることで再現性の高い料理を出せる

魚は奥が深い。だから面白い。

魚に限らず、素材の旨さは、その素材の科学的な根拠を知らずして、引き出すことはできません。運やカンに左右されず、いつでも100%再現できるのがプロだと思います。

魚の鮮度について

魚の鮮度の定義は、必ずしも獲れたてであるとは限らない。魚種に限らず、理想的な鮮度であるための条件は、「できる限り苦しませることなく活け〆したもの」です。

生物の筋肉はATP(アデノシン三リン酸)が分解されることで発生するエネルギーを使って動きます。それは、人も魚も同じ。魚は水揚げ時、逃れようと暴れまわりますが、この時、暴れれば暴れるほど、ATPを分解し、減少してしまうのです。

ATPはいわば、エネルギーの源。生きている時は、酸素を取り込むことで回復しますが、死ぬと、さらに分解されていきます。

ATPの枯渇により、筋源繊維であるミオシンとアクチンが強く結合して、アクトミオシンを生成し、筋肉は固くなる。これが死後硬直です。

この硬直が解けると消化器の中にいた細菌などにより分解が進みます。腐敗は、こうして始まります。

ということは、暴れまわって、ATPが少ない状態で死ぬと、死後硬直が早まり、鮮度落ちが早くなるということです。

鮮度の良さ=美味しさ?

では、理想的な鮮度の魚はそれだけで美味しいのかどうか。

美味しさとは何か?以前、考えましたが、その時の答えは、「栄養素を摂取できた時の快感」でした。料理するというのは、素材の好ましい風味をどう引き出すか、が大きなテーマになります。

その観点でいくと、たとえ理想的な鮮度の魚を刺身にしても、実は美味しくありません。

ATPがまだたっぷりとある死後硬直前の魚は、無味です。人が感じるこのとできる甘さや、旨みは一切、感じられません。あるとすれば、歯応えのみ。ただ、それもグニグニとした肉のかたまりで、味のないグミを食べているようなものです。

理由はATPの分解とともに、旨み成分は生成されるから。だから、生きている魚を〆て、すぐに食べたとしても、美味しくありません。

お店によっては、生け簀で活かした魚を〆て提供することがありますが、演出としては魅力があるものの、美味しいとは言えないでしょう。

魚の旨みとは?

ATPの分解の工程は、以下のようになります。

ATP(アデノシン三リン酸)→ADP(アデノシン二リン酸)→AMP(アデニル酸)→IMP(イノシン酸)→イノシン(HxR)→ヒポキサンチン(Hx)

これが段階的に進むわけですが、人が味を感じることができるのは、AMP(アデニル酸)とIMP(イノシン酸)。これらは旨味成分と言われていますが、中でもイノシン酸は、グルタミン酸、グアニル酸と並び、旨みの3大成分のひとつで、強い旨みを持ちます。

ちなみにイノシンやヒポキサンチンには味がなく、これらが増えるにしたがって腐敗へと近づいていきます。もちろん、刺身では食べれません。

旨みを最大限引き出す条件とは?

では、旨みを最大限引き出す条件とは、何なのか。

ここで、冒頭の理想的な鮮度の条件に戻ります。

「できる限り苦しませることなく活け〆したもの」

これが大事なのは、魚が暴れると鮮度落ちが早くなるからだけではなく、そもそもの旨み成分を生成するエネルギーの源、ATPの含有量が少なくなるからです。

逆に言うと、ATPの含有量が多ければ多いほど、旨み成分は多くなるということ。

科学的に根拠を求めることで再現性の高い料理が出せます。その知識があるだけで、人生はより豊かになると思います。

具体的にどうすれば、最も旨い刺身を提供できるか?引き続き考えていきます。

>>>感動するほど旨い刺身を提供するには?②へ

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