魚を究める

感動するほど旨い刺身を提供するには?②

理想的な魚の締め方

感動するほど旨い刺身を提供するには?を考えています。

そのためには、科学的な根拠を求めることが大事です。理由は、それを知ることで、再現性を高めることができるからです。プロならば、お客様に提供する際、ブレがあってはなりません。HICOとしても絶対に抑えておきたいことです。

昨日は、魚の鮮度=美味しさではないこと、旨みを最も引き出すには、できる限り苦しませることなく活け〆することが、理想であると書きました。今日は具体的に、お客様に提供することを想定して、理想を求めていきます。

活け〆の方法

魚種にもよりますが、ここでは、鯛などの中型以上の魚を刺身にする場合の理想で考えます。

活け〆するには、延髄を切る、脳を破壊する、首を折るなど、いくつか方法がありますが、ベストだと思うのは、脳を破壊する方法。身がいちばん傷つかないからです。技術がいりますが、眉間からアイスピックなどで刺して、魚が「あ、おれ、死んだ?」と錯覚した状態にするのが目的です。

神経〆はなぜするか?

次に行うのが、神経〆。

脳を破壊しても、魚はまだ生きています。心臓など臓器も動いているし、筋肉も動きます。死んだ、と魚が思っているだけなのです。

神経も同じで、まだ生きている。そのため、〆たあとでも、ATPを消費し続けていくのです。この消費が結構、大きいらしい。神経〆をしたのとしないのでは、死後硬直までにかかる時間がずいぶん違うという。その化学的な数値は資料として持っておらず曖昧ですが、魚は脊椎を軸に筋肉を動かすのですから、頷ける話です。

魚の神経は背骨の真上を通っています。先ほど眉間から差し込んだ穴から、針金を差込み、ぐいぐい入れていきます。尾の根元まで到達したら前後させて、神経をかき出すように破壊させます。これで完了。

血抜きはなぜするか?

次は、血抜きです。

魚の場合、背骨の真下、腹側に大動脈が通っています。その大動脈だけを、良く切れる包丁で切ります。この時、心臓やほかの内臓を傷つけずに、血管だけを切るのが重要です。

そうしてから、海水の中に入れて放血させる。

その時の水温は、魚が普段、生活している水温に合わせるのが良いと思います。氷水につける方もいますが、それでは、心臓の働きが鈍る。

魚は、脳死しているだけで、まだ心臓は生きています。心臓は、ポンプのように血を吸っては吐き出し、体内に循環させています。大動脈を切ったのは、その大きな血液の流れを断ち、そこから放血させるためなのです。

では、なぜ血を抜くのか?

魚が生きているうちは、血は臭みもなく、むしろ、美味しいと感じるほどなのです。ただ、酸化しやすく、腐敗しやすいので、結果的に、最も早く生臭さの原因になります。

また、白身の場合は特に、血が身につくと、外観上、うつくしくない。血抜きをしないと、捌くときに血管を切るので、身についてしまうリスクがあります。

保管温度について

ここまでいけば、下処理は完ぺきに近いと思います。

ATPの消化は限りなく抑えられた状態です。これから、ATPの分解と共に死後硬直へと向かい、そして旨み成分が生成されていく。

その過程で気をつけたいのは温度です。低すぎると、身が縮もうとしてATPを無駄に消費させてしまう。死後硬直が早まるだけで、苦労して神経〆までした意味がありません。

死後硬直が始まるまでは、7~10度が適温だといいますが、確たる根拠はわかりません。ただ、身が縮まず、腐敗が進みにくい、ちょうど良い温度ということで納得はできます。

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