遊び心

シャトー・ラトゥール|幾重にも絡み合う交響曲②

老将軍タルボが勝ち続けなければならない理由

引き続き、シャトー・ラトゥールのストーリーを紹介します。

1855年パリ万博の際、第一級に格付けされた圧倒的な力強さを持つワイン、シャトー・ラトゥール。

舞台はフランス・ボルドー。この地を巡って、フランスとイギリスが熾烈な争いを極めた100年戦争の終幕を飾る老将軍の物語です。

<第一話>はこちらからどうぞ。

フランス軍VSイギリスの老将軍

100年戦争も終盤。

当時のフランス国王シャルル7世は、ボルドーがふたたびイギリス軍に占領されたと知ると、兵隊を集め、作戦行動をとるべき時期を見極めていました。彼は、ただの羊飼いにすぎなかったジャンヌ・ダルクの才覚を見抜き、指揮をとらせた人物です。この時には彼女を失っていましたが、彼の率いるフランス軍は、着実に勢力を伸ばしていました。

そして1453年。春がやってくると、シャルル7世は軍をボルドーへと向かわせます。

フランス軍が、カスティヨンというボルドー地区の一角を包囲しようとしたとき、タルボ将軍の兵力は6000人にまで増えていました。しかし対するフランス軍は10000人。圧倒的にフランス軍の方が優位でしたが、その指揮官はタルボ将軍をおそれ、自らの陣地を取り囲むように、塹壕と矢来を並べ、さらに300台の大砲をその間にセットするよう兵士に命令したのでした。兵力の差を考えれば、あまりにも防御的な布陣です。

勢い

タルボ将軍は、果敢に軍を進めます。いくつかの野戦も、おおきな損害なく打破し、兵士たちの士気も最高潮でした。夜を徹して、進めてゆきます。そして、フランス軍の陣地まであと少しというときでした。

「フランス軍は退却しているぞ!」

カスティヨンの町からの伝令が、タルボ将軍に伝えます。

「城壁の辺りから、砂ぼこりがもうもうと巻きあがって、遠ざかっていくのを見た!」

その情報を聞くまで、彼は来るべき戦闘の前に、休憩をとろうと考えていました。あらたに援軍も頼んでいたし、いくら士気の高い兵士ばかりと言っても、野戦続きで、疲れも出てきます。かつて、アレキサンダー大王が、戦闘の前に当時は貴重であったワインをふるまったように、あのサン・モンベール塔のワインを皆で分け合いたかった。

しかし兵士たちの勢いはとまりません。

「攻めましょう! タルボ将軍!」

「ここで一気に討ち落しましょう!」

背中で語る

タルボ将軍も、血の煮えたぎるような思いにあらがえませんでした。思えば、この地を追い立てられて20年以上。この時をずっと、待ちわびてきたのです。ある女がいいました。

「いくの?」

「ああ。」

「また私から逃げるのね。」

「違う。」

「勝手に死ねばいいんだわ。」

「待てと言っている。」

「ずるい。」

「戦いが終われば、迎えに来る。」

タルボ将軍は、決して饒舌ではありません。いつも背中で語ってきました。男には果たさねばならぬ使命がある。本当にだいじなものを守るために。でも、すべてを言葉にはしない。曖昧なやさしさは、かえって女を傷つけることになると彼は思うからです。

この、戦いで疲弊した時代に、女は待ち、男は勝ち続けるしかない。哲学でもなければ、詩でもなく、それは現実です。過去に負った恥辱を晴らすだけでなく、自分が自分であるために、この戦いには負けるわけにいきませんでした。勝利を手にし、人々に生きる希望を与え、そして、この地を、我々の手にとり返さなければならない。

男、タルボ将軍の戦いはどうなるのか?続きは明日お話します。

>>>シャトー・ラトゥール物語<第三話>へ

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