料理とワインについて

イタリア・ヴェネト州の白ワイン

イタリア・ヴェネト州の白ワインの印象ストーリー

ワイングラスの脚がこんなにも細くて長いのは女性の指先を美しく見せるからだとなにかで読んで、なるほどな、と思った。

五年前、僕はある女性に出会って、彼女の小説を読んで、その、繊細な物語を紡ぐ小さな指先に見とれた。まるでホワイトアスパラガスのように細くて、彼女にそれを伝えると、おにぎりもうまく握れないし、ハンバーグもおっきいの作れないから不便なのよ、と冗談めかして笑った。

そして、小ぶりなおにぎりやハンバーグが僕のためだけに作られるようになり、僕が学生から社会人として働くようになってから、二人でワインを飲むことが多くなった。出会ってから、二年がたっていた。ワインに飲み方があるとすれば、僕たちはきっと、めちゃくちゃだったと思う。赤ワインでも冷蔵庫でキンキンに冷やしたし、ビーフシチューに白ワインを平気で合わせていた。無計画、適当、気分。それが、僕たちの休日のすごし方でもある。

口に含んだ瞬間、小鹿が駆け抜けたわ、と彼女が言ったのは、ヴェネト州の白ワイン、「モデッロ・ビアンコ・デッレ・ヴェネツィエ」だった。

「奈良公園・・・・・?」

東大寺のお土産物屋さんが立ち並ぶ真向かいに、大きく開けた広場がある。突き進むと新公会堂があって、さらに右手に上ると春日大社へと通じる道に行く。その間を、一頭の小鹿が颯爽とかけぬける映像が頭をよぎった。奈良公園は、僕たちがはじめて出会った場所である。

この五月で、僕たちは五年間も一緒にいたのだと気づいた。ワイングラスを持つ彼女の指先は、ペンだけを持てばよかった学生時代に比べると、ややたくましくなり、ささくれもできている。最近では、十センチほどのハンバーグも余裕で焼いてくる。お弁当を持って奈良公園に行った時、鹿が寄ってきて大きなおにぎりを奪おうとすると、僕がぼーっとへらへらしている間に、彼女は、弁当箱を入れてきた袋をブンブン振りまわして追い払った。肝心なときに頼りにならないんだから、なんて言われちゃって。

でも、それでいい。彼女のおなかの中には今、子供がいる。しばらく仕事も休むからその間、もう一度小説を書いてみようかな、なんて言っている。さて、どんな物語が生まれるのかな。今から、とても楽しみである。

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