料理とワインについて魚を究める

魚のトマト煮込みを考察3

魚のトマト煮込みというシンプルな料理。

シンプルだからこそ、独自の領域に達しないと価値がない、ということで、どこまで深く考えられるか挑戦しています。

それが、お客さんに提供する時、感動につながるはず。

今回が第3弾です。

「魚のトマト煮込みを考察1」はこちら。

「魚のトマト煮込みを考察2」はこちら。

 

前回までの流れを簡単に説明すると、まず、素材を深く知り、その上で料理へのアプローチを考えた時、出発点は、魚のイノシン酸とトマトのグルタミン酸のパワーバランスを量る。ということになりました。

人が「美味しい」と生物学的に感じるのは、「栄養素を摂取した時の快感」であり、それは「甘味」と「旨み」によって、強烈にもたらされるからです。

 

トマトの旨み成分を引き出すには?

トマトは、熟していれば熟しているほど、グルタミン酸が増加します。そして、その旨み成分は、外側よりも内側に多く含まれるという。

高級リストランテでは、トマトの種をこし器等で取り除きますが、旨み成分を残すことを考えるとそれは逆効果。種は入れた方が良いのです。

加熱方法にも、ポイントがあります。

トマトのグルタミン酸をもっとも高めるには100度で一気に加熱すること。

60度で加熱するとグルタミン酸は減少します。

ただし、トマトにもグアニル酸という干し椎茸に多く含まれるアミノ酸の一種が含まれており、それは50~60度で増加することが分かっています。

魚のトマト煮込みの場合は、イノシン酸×グルタミン酸の相乗効果を狙うので、強火で一気に過熱し、沸騰したら火を弱め、余計な水分を飛ばしたら、火を止めます。グルタミン酸を最大限に引き出すには煮込すぎない方がいいということです。

 

ベストな料理工程

これまで考えてきた結果から、ベストな料理工程が見えてきます。

まずは、素材の魚を見極め、そのイノシン酸含有量を測ること。鮮度が良すぎる場合、すこし寝かせてイノシン酸が最高潮になる頃まで待ちます。(詳しくは、「感動するほど旨い刺身を提供するには?」を参照ください。)

目安は、死後硬直がとけた時。

〆方や保管、保存方法によりますので一概にはいえませんが、魚の筋肉エネルギーとなるATPが分解されて出来るイノシン酸は、死後硬直したのち、30分後くらいがピークになるという話です。

その魚のイノシン酸含有量が計れたら、次は、トマトのグルタミン酸との相乗効果を最大限狙います。気を付けるのは、トマト、及びトマトソースの量です。多すぎてもいけないし、少なくてもいけない。魚の持つ、イノシン酸量と同量のグルタミン酸量をかけ合わせれば最高の相乗効果となります。

ただし、トマトは100度で一気に加熱するとグルタミン酸は増加し、60度では減少しますから、それを計算に入れなくてはなりません。

手順としては、フライパンでトマトソースを作り(強火)、そこへ火の通りを逆算して、十分に旨みののった魚を投入(中火)。魚に火が入るまで火を弱めながら、トマトソースを絡めて提供。というのが自然な手順です。

ここでようやく、味の5大要素(「甘味」「酸味」「渋味」「塩味」「旨味」)を調整する必要が出てきます。魚とトマトから、「甘味」「旨み」は引き出してこれました。あとは足りない部分「酸味」「渋み」「塩味」をおぎないます。

 

不足している「酸味」「塩味」「渋味」

郷土料理の構成を調べると、あまりにも理に適っているので驚かされます。シチリアでは、魚のトマト煮込みにつかわれるのはケイパーやオリーブ、アンチョビ。これはまさに、「酸味」「塩味」「渋味」を持つ副材料ではないですか。

これらの強さを調整することで、料理の完成度は高くなります。

引き続き、副材料をどうするかについて、深めてまいりたいと思います。

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