引き継がれる意志
投資と思って、これまで様々なレストランへ行きました。
星付きレストランも、知人のすすめるレストランも、自分の足で見つけてきたレストランも、様々ですが、最も記憶に残り、世界最高のレストランだと思うのは、かつて私自身が勤めていたレストランです。
30年続いたレストラン
そこは、関西の、静かで、品の良い住宅街にありました。
大通りからは外れていて、目立った看板もないのですが、お客様は多かった。何度も足を運んでくれる方がたくさんいました。
星付きレストランではありません。今はもう、閉店して存在しないのですが、30年、続いた歴史あるレストランでした。
重い扉を開けるとそこは異空間。重厚感のあるカウンター席で、床は大理石。天井には、本物の石がはめ込まれていました。昼間でもうす暗い空間ですが、窓から絶妙にはいってくる光量は日常から隠れるのに好都合です。
細部まで考えられた演出
カウンター席は12人が横に並んで座れるロングカウンターです。
夜。日も沈み、抑えられた照明の店内。椅子に腰を掛け、足を組んで、肘をカウンターに乗せて、ワイングラスを傾けていると、時間は永遠にも、一瞬にも感じられました。その椅子は、何時間座っていても疲れません。テーブルの高さと椅子の高さと、腰を掛ける幅が絶妙に設計されているのです。
スポットの照明はすべて間接照明。自分の顔に直接あたることはない。
音楽は、ジョン・コルトレーンのJAZZが良く似合います。BOSEのスピーカーから、店内を包み込むように流れていく。
目の前に広がる光景は、ワイン、ウィスキー、ブランデー、リキュールなど幾種類もの酒が並び、重厚感がある。
この、心地よい緊張感と、落ち着いた安らぎ。
哲学レベルでこうした空間を演出できるお店に私は出会ったことがありません。
お店は生き物
作ったのは私ではありません。私はここで、9年働き、最後の3年ほどは店長を任されていました。
これまでの人生において、もっとも濃密な時間だったかもしれません。いま、存在しないのは本当にさびしい限りです。私はこのカウンターの内側に立って、仕事をするのが好きでした。誇らしかった。ワインを注ぎ、お客様と会話し、時に目の前で料理して、提供したり。
溶岩焼とカルツォーネの店HICOは、コンセプトが違いますが、個人的な思い入れを語れば、9年勤めていたこのレストランが、具体的な目標なのです。
お店は生き物です。今はなきそのレストランの意志は、HICOが引き継いでいきたいとさえ思います。
コロナショックにより、人の暮らしから考え方、働き方は大きく変わるのでしょう。
どうなるのか?というよりも、どう生きたいのか?
たいせつな人たちと楽しく人生を送る為に必要な資産と、生き方を、ない頭で頑張って考えてます。あなたのお役に立てれば幸いです!