調理工程というのは必ず、それを行う理由があります。
「そうと決まってるから。」
ということは一流の料理人なら言いません。
「なぜなら・・・」
と答えを持っています。
なぜ酢に漬ける前に塩をするのか?
では、しめ鯖を作る時、酢に漬ける前に塩をしますが、それはなぜでしょうか。
なぜ、酢を先に漬けてはいけないのか。
もし後輩に聞かれたら、5年前の私なら「そうと決まってるから」と答えたかもしれません。
美味しいにはすべてに根拠があり、それを分かった上で創意工夫や、目に見えない想いを加えて演出するのが自分の料理です。
酢とタンパク質
塩をする前に酢に漬けるとどうなるかというと、魚肉は柔らかくなります。
魚肉中の筋肉組織内には、多くの酸性タンパク質分解酵素があり、それが作用するようです。
要は、酢に漬けることにより、タンパク質が酸性域になると、歯ごたえを形成する筋形質たんぱく質は分解されてしまうのです。
だから、柔らかくなる。
この作用は、固い肉を柔らかくする際に効果的ですが、しめ鯖においては逆効果です。
ただでさえ柔らかいサバの身は、ぼろぼろになってしまう。
塩をする理由
塩をすると、魚肉はどういう反応を起こすのか。
まず、浸透圧により、塩分濃度の薄いサバの魚肉中の水分が、塩分濃度の濃い表面へと移動します。
これは、地球が丸いのと同様に自然の法則です。
余計な水分が出ることで、魚肉は引き締まり、固くなります。
よりミクロの視点で見ると、魚肉タンパク質の中の40%を占めるミオシンは凝集します。
こうなると、酢に漬けても分解されにくくなるのです。
塩をしていない(凝集していない)ミオシンは酸性域(pH4)以下で溶解することが分かっていますが、塩をして凝集した状態だと、不溶性になるのです。
だから、酢に漬ける前には、十分に塩をして、ミオシンを凝集させておく必要があります。
コロナショックにより、人の暮らしから考え方、働き方は大きく変わるのでしょう。
どうなるのか?というよりも、どう生きたいのか?
たいせつな人たちと楽しく人生を送る為に必要な資産と、生き方を、ない頭で頑張って考えてます。あなたのお役に立てれば幸いです!