理想の柔らかさで仕上げる為に
「肉の火入れについての科学的知識」については以前も書きました。
>>>肉の火入れについての科学的知識
肉料理の課題は火入れです。前回は主に、たんぱく質の熱変性による科学的知識をもとに焼く場合の想定をしていました。今回は、煮込みに主眼を置きます。
筋源線維たんぱく質と筋形質たんぱく質
動物の肉は、筋線維と呼ばれる細胞がコラーゲンの膜で束ねられた構造をしています。この筋線維は、長い繊維上の筋源線維たんぱく質と水溶性で球上の筋形質たんぱく質で構成され、筋原線維たんぱく質の間に筋形質たんぱく質が詰まった構造をしています。
といってもわかりづらいですよね、大、中、小、3つの大きさのストローをイメージしてください。大のストローは筋肉です。そのなかに中のストローが十数本ぎっしり詰まっています。この中のストローの中に小のストローが数十本ぎっしり詰まっているのですが、これが、筋原線維たんぱく質です。
そして、その小ストローと小ストローのすき間に球状のたんぱく質がびっしり詰まっていて、これが筋形質たんぱく質になります。ややこしいですね、イメージできますでしょうか。
たんぱく質の成分や料理法についてもっと知りたい方は下記をご覧ください。
>>>たんぱく質の料理法
凝固する温度帯
加熱した時の肉の固さは、繊維状の筋原線維たんぱく質と球状の筋形質たんぱく質、それからそれらを覆っているコラーゲン、この3つの変性する温度によって決まります。
筋原線維たんぱく質が熱で凝固する温度は、45~50度付近。
筋形質たんぱく質は56~62度付近。
コラーゲンは65度付近でいったん縮んで最初の長さの約3分の1ほどになり、さらに加熱すると分解されてゼラチン化します。
加熱による肉の固さの推移
ということは、加熱をはじめて最初に熱で固まるのは、小ストローの筋原線維たんぱく質です。この時点では、小ストローとの間にある筋形質たんぱく質は固まっていないので、噛むと筋原線維たんぱく質がたやすく動く為、やわらかく感じます。筋肉内の温度はこのとき50度。
これが60度を超えると、筋形質たんぱく質も熱で固まる為、筋原線維たんぱく質とぴったり張り付いてしまい、固く感じるようになります。
さらに65度を超えると、筋線維を束ねているコラーゲン、中のストローが急激に縮むので、肉は一段と固くなります。
ところが、75度付近を超えると、コラーゲンの分解が始まり、ゼラチン化が急速に進むため、肉はふたたび柔らかくなるのです。
実験で、60度付近までは温度が高くなるほど柔らかく感じ、60度を超えると急激に固くなり75度付近を超えると再び柔らかくなることが証明されていますが、その理屈は以上でわかります。
その後、煮込み続けると
煮込み続けると、筋線維を束ねているコラーゲンの膜のゼラチン化が起こるので、どんどん柔らかくなっていきます。長時間煮込んだ煮汁を冷やすとゼリー状になるのはそのためです。
ただ、煮込み時間が長くなりすぎると、コラーゲンの膜が溶けて、肉の繊維がばらばらにほぐれる為、肉は形を保てません。
コロナショックにより、人の暮らしから考え方、働き方は大きく変わるのでしょう。
どうなるのか?というよりも、どう生きたいのか?
たいせつな人たちと楽しく人生を送る為に必要な資産と、生き方を、ない頭で頑張って考えてます。あなたのお役に立てれば幸いです!