秘めた情熱を宝石箱に閉じ込めて
郷土料理は、その土地の気候、風土、歴史、人に根差した文化であると思います。それにまつわるストーリーを集めて回ったらグリム童話のように、魅力的な物語になるかもしれません。HICOでは独自性を保ちながらも、こうした料理の物語を一緒に楽しんでもらいたいと思います。
ティラミスの物語
ティラミスは最も人気の高いイタリアのデザートのひとつです。その物語をご存知でしょうか?
時は1860年代、舞台は北イタリア、ヴェネト州にあるトレヴィーゾです。ここに今も現存する「アッレ・ベッケリエ」というレストランがあります。
そのレストランの女主人が妊娠していた時のこと。
彼女はつわりがひどく、体調を崩しがちでした。味覚が変わり、何を食べても美味しくない。大好きだった仔牛レバーのソテーも、干し鱈のミルク煮も、寄せ付けなくなった。地元名物のじゃがいも料理なんて、もってのほかでした。
その彼女のレストランで働いていた料理人が、ロベルト・リングアノット。女主人はロベルトに救いを求めます。
「ねえ、ロベルト、お願いだから、私を元気づけて」
彼はこころ優しい男でした。彼女の味覚は以前と変わっている。お肉も魚も野菜も近ごろすすまない。さて、どうしようか。
当時、トレヴィーゾの農家では、弱った体を元気づける強壮食で、卵と砂糖を泡だてた食事を作りました。彼は、「これだ!」と思います。そこにマスカルポーネチーズを加えて、口当たりをよくし、冷やし固めて、デザートとして女主人に提供したのです。
ティラミスの本当の物語?
ティラミスとは、イタリア語で「Tiramisu」。Tira = 引っぱる、mi = 私を、su = 上に。英語で言うと、pull me up。直訳すると、私を上に引っ張って、という意味ですが、女主人がロベルトに対して言った言葉がこれでした。
「 私を元気づけて。」
以上が、ティラミスの表向きの物語ですが、実はこの物語には裏面があるのです。
そもそも、こんな、カロリーたっぷりの重たいデザートを、妊婦さんに作るのも変だな、と思いますよね。
では、設定をこのように変更してみるといかがでしょうか?
女主人は、妊娠していなかった。作ったのは、ロベルトではなく、女主人だった。「私を元気づけて。」というのは、ロベルトへのメッセージだった・・・。
これ以上は、書けません(笑)イタリア人は、そんな大人のデザートが大好きみたいですね。
HICOで提供するときには、とろける口当たりを重視して、重くなりすぎず、かといってさらっとしないように、作ります。冬のコースのデザートにお作りするかもしれません。
器に迷いますね。。。サファイヤのように鮮やかで深みのあるガラスの宝石箱はないでしょうか?秘めた情熱を閉じ込めるようにティラミスを盛れば、物語との親和性が生まれ、そうすると料理の余韻はより深くなります。
コロナショックにより、人の暮らしから考え方、働き方は大きく変わるのでしょう。
どうなるのか?というよりも、どう生きたいのか?
たいせつな人たちと楽しく人生を送る為に必要な資産と、生き方を、ない頭で頑張って考えてます。あなたのお役に立てれば幸いです!