マクドナルドが地獄を見ることになったきっかけは、2014年7月のことでした。
期限切れの鶏肉使用問題が発覚したのです。
当時、映像を見た時はぞっとしました。
色の変わった、鶏肉。
床に落ちた鶏肉を平気で使う人。
中国の生産工場での一場面でした。
さらに、追い打ちをかけるように事件は続きます。
2015年に異物混入が相次ぎました。
ねじ、プラスチック片、ビニール・・
赤字は300億円まで膨らんだといいます。
2018年は235億円の黒字!
事の発端からわずか4年。
見事、V字回復を果たしました。
さすが、藤田田さんの築いたマクドナルドだな、という感想を持ったのですが、そのV字回復の要因とは何だったのか、調べてみました。
お客さんが求めるマクドナルド像
ブランド価値を大きく損なったマクドナルドは、信頼回復の為に動き出します。
しかし、内部は混迷していました。
お客さんが求めるマクドナルド像を、運営側はまったく把握してなかったようです。
女性向けにアボカドバーガーを販売したり、ヘルシーをテーマにしたり、極端に値下げしたり、長く支持されてきたジャンクフード的なマクドナルドが本来提供する価値を見失っていました。
管理体制というのは当然強化されるべきですが、それだけでは収まりません。
2014年の期限切れ鶏肉問題から、半年後の異物混入事件につながったのは、そもそもの原因が別のところにあったことを示唆しています。
原因は、人のこころ
レストランに限らず、商売はお客様あってのもの。
商売は、マーケットがなければ成り立ちません。
マーケットというのは、人のニーズによって作られます。
マクドナルドに求めるニーズは、何か?
サラ・カサノバ社長は1年間で47都道府県すべてに足を運び、お客さんに直接、話を聞いたといいます。
そういう中で、分かってきたのは、マクドナルドはお客さんを見ていなかった、ということ。
お客さんはヘルシーさや過度な値下げを求めているわけではなかったんですね。
逆に、そうした企画がうまく運ばず、運営としても厳しくなってきた。
相手のことを考える余裕がなくなってきました。
空気づくり
お客さんが求めていたのは、目新しい企画でも過度な値下げでもなく、ジャンキーな雰囲気。
ボリュームがあって、その割に安くて、カロリーは気になるけど、なんかふっと食べたくなる。
軽い「背徳感」だったんですね。
それが、ほんとうのニーズだったわけです。
もちろん、食の安心安全は欠かせませんから、土台になくてはなりません。
そうした基礎を固めた上で、マクドナルドは「なんとなく入ってもいいかな」という空気づくりに注力しました。
食肉偽造問題や異物混入の火消しにやっきになるのではなく、ポジティブな情報をどんどん流して、ネガティブな情報を上回るように、SNS、ネットニュース、雑誌などあらゆる角度から話題提供したんですね。
具体的な施策
では、具体的にどんな施策をしたのか、見てみましょう。
ディスカウントしない
低迷期、極端なディスカウントにより、マクドナルドは集客していました。
ハンバーガー1個注文すると、もう1個ついてくる。
ポテト半額。
こうした施策はカンフル剤です。
売上はあがっても収益は下がる。
100円利益があったハンバーガーを50円の利益で販売すれば、売る労力は単純に2倍になります。
それにかかる広告費や人件費を考えると、あまりやるべきではない企画でした。
レギュラー商品に知恵を入れる
健康ブーム、ヘルシーブームに流され、ベジタブルバーガーやアボカドバーガーを販売するなど目新しい企画で集客するのではなく、レギュラー商品で集客できないと持続性はありません。
理由は、新しい施策はコストがかかるからです。
新商品は、気を引きます。
しかし、一過性のものであったり、本当にそれがあたるのか、やってみないとわからないところもある。
巨大企業とはいえ、300億円の赤字を出したマクドナルドは、体力がありあまっているわけではありません。
レギュラー商品が売れた方がはるかに効率がいいわけです。
ハンバーガー総選挙
そのために仕掛けたのが、マクドナルド総選挙でした。
12のレギュラー商品の中で、どれが一番支持を得るのか?
ダブルチーズバーガーはチーズをトリプルにする等、それぞれ、公約を設けてSNSなどで広くお客さんの参加を呼びかけました。
これ、素晴らしいアイデアですよね。
SNSで話題にさせる
もうひとつ、定番メニューのチキンナゲットを、ソースだけ変えて売るということもやってます。
その方法が面白い。
「怪盗ナゲッツ」というキャラクターを作ったんですね。
その新しいソースを狙って現れる正体不明のソースハンターが怪盗ナゲッツで、その目撃情報をツイッターに投稿すると商品があたるというキャンペーンをしました。
正体不明、といっても仮面の裏は「ゲッツ!」で有名な黄色いスーツに身を包むお笑い芸人。
誰もが「ゲッツじゃん」とわかるものなんですが、この企画は大当たりしたそうです。
すごいですよね。
新商品を出そうとすれば、食材を準備するために1年前から手配しなければならず、デビューまで時間もコストもかかりますが、こうした企画なら労力は10分の1くらいじゃないでしょうか。
マーケティング視点でみるV字回復の要因
上記はほんの一例です。
業績回復までには、多くの施策を打ち出してます。
ただ、上記に共通しているのは何か、というといかに収益を圧迫させることなく、楽しくて面白い話題を提供するか?
ということ。
2014年から2015年に起こった事件は、消えたわけではありませんし、完全に信頼回復したかというと、そうでもないかもしれません。
しかし、マクドナルドに関する話題はいまや、ポジティブな話題ばかりです。
マクドナルドに普段いかない人でも、機会があれば「マクドナルドに行ってもいいかな」と思えるのではないでしょうか。
こういう空気づくりが重要だったんだと思います。
施策は仮説と検証
そうはいっても、実際に打ち出す施策は何をすればいいのか。
内部ではかなりの議論と摩擦と和解と改善が起こったと思います。
その振れ幅たるや、相当なものだったと察します。
施策は、仮説と検証を繰り返し、ヒットした企画があれば、それを横に縦に展開した軌跡がうかがえます。
コロナショックにより、人の暮らしから考え方、働き方は大きく変わるのでしょう。
どうなるのか?というよりも、どう生きたいのか?
たいせつな人たちと楽しく人生を送る為に必要な資産と、生き方を、ない頭で頑張って考えてます。あなたのお役に立てれば幸いです!