カルツォーネを「孫子」で分析する

たとえば、カルツォーネという、ピザが看板メニューの店を作るとします。その際、孫子『兵法』でその戦略性を評価するとすれば、どのようになるでしょうか?

以下では当社で、孫子の兵法で検証した結果を記録しておきます。

目次

カルツォーネは100年の年月に耐えうるか?

イタリアンレストランで、核となるメニューに【カルツォーネ】を置いたとき、100年続くレストランの礎を築くことができるか?検証します。

どう戦うか?よりも、どこで戦うかを見定めることが戦略の要諦。そもそも、なぜカルツォーネなのか、ということはおいておき、そこに戦略があるとすれば、どんな戦略になるのか、実験的に想定したいと思います。

孫子によると、戦う前に考えておくべきことは5つあるという。

一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法

―――孫子『兵法』

これが有名な五事七計の<五事>です。

カルツォーネを名物メニューにするなら、なぜカルツォーネでなければならないのか?ということが問題です。

その大義。これが最もはっきりしていなければなりません。

持続可能性

私がカルツォーネを良いと思った最大の理由は、持続可能性(サスティナビリティ)があるから。

カルツォーネはいわゆる包み焼きピッツァですから、基本となる原料は、「小麦」「水」「塩」「酵母」だけで作られる生地と、中に包む具材です。

主原料は価格、原料とも安定していて、枯渇する心配も少ない。中の具材は、いくらでも変えていけます。

一般的にはソーセージやトマト、きのこ、チーズなどですが、ホワイトソースを入れても美味しいし、魚や肉を包んでメインディッシュにもなれば、リンゴとカスタードでアップルパイ風のデザートにも出来る。

もう自由自在です。前菜からデザートまで、バリエーションは無限でしょう。

テイクアウト

また、店内でレストランの料理として召し上がって頂けるだけでなく、テイクアウトもできる。

さらに、環境さえ整えば通販も可能です。ここが大きい。

それからもうひとつ可能性を感じるのは、そこまで知名度が高くないこと。ピッツァは広く知られていますが、カルツォーネと聞いて、具体的にイメージできる人の絶対数は少ない。

これは売れるのかわからないという不確実性と同時に、敵が少ないということでもある。

うまくやれば世界の最先端を走れます。

カルツォイオーラ!?

だから、ピザ職人のことを、ピッツァイオーラといいますが、もしかしたら私は世界で初めてのカルツォイオーラになるかもしれない(笑)

いずれにしても、ビジネスとして拡張性と持続性があり、100年続くレストランの核メニューとして申し分ないのでは?と考えるに至りました。

まとめると…

  • 主原料が枯渇する心配が少なく、価格も安定している
  • バリエーションが無限。時代や嗜好、用途に合わせていくらでも開発できる
  • テイクアウト、通販も可能なのでビジネスの拡張性が高い
  • 敵が少ない
  • 世界初のカルツォイオーラになれる!

上から、カルツォーネに<道>はあると考えたわけです。

タイミングミングはどうか?ということ。

カルツォーネが時代にあっているか?外部環境は整っているか?ここが難しいと感じます。

なかなか確信を持てないのも、時代が読みづらいから。

カルツォーネの知名度

たとえば<道>でも書きましたが、「カルツォーネ」ときいて、全体の何パーセントの人が具体的にイメージできるか?

そこまで浸透していないものが、これからの少子高齢社会で受け入れられるか?

ハンバーガーのように市民権は得られるのか?

得られないにしても、価値を高めていけるか?

それを買いたい人がどれだけでてくるのか・・・?

答えは出ません。

天の時は訪れるか?

ポイントは絞られました。

仮に、カルツォーネ専門店として開業したときに時流に乗せられるかどうか。

開業する地域は、受け入れ態勢にあるか。

「天の時」を見極め、クリアできれば勝算は高くなるはずです。

勝敗を分ける大事な分析なので続きはじっくり検討していきたいと思います。

そもそもの目的は、≪100年続くレストランを創る≫ことです。

そのために、核となるメニューとして候補に挙げた「カルツォーネ」で本当に勝負していいものかどうなのか、しつこいくらい考えなくてはなりません。

なぜなら、その判断次第では敗れることもありうるからです。敗れるとは、100年持続しないということ。下手をすれば、事業に失敗して、食べていけなくなるかもしれない、家族を養えないかもしれない。

孫子は、冒頭でこういっています。

兵は国の大事なり。死生の地。存亡の道なり。

まさに生きるか死ぬかの戦です。

地の利

地の利とは、かみ砕いていえば、他の誰も追随できないほどの強みはあるだろうか?ということ。自らが守るには易いが、他が攻めるには険しいところへ立てるか・・・?

まず立地です。

東京都で現実的に考えられるのは、東京の郊外でありながら、ちょっとした観光スポットもあるところ。武蔵野市、立川市、八王子市あたりを考えています。

なぜか?

理由はいくつか「考え」があるのですが、ここでは多くを語りません。

カルツォーネを売りにした場合さらにそれを強みとする「地の利」とは?という条件で、考えます。

レストラン×アウトドア

カルツォーネは、石窯で焼けばいいと決めています。

理由は、一般の家庭では本格的な石窯は中々設置できないのと、400度を超える超高温で焼き上げるので、調理時間は2~3分で済むこと。また、焼き上げる際にはライブパフォーマンスを演出できます。

一番の狙いは、レストランとアウトドアとの融合です。ヨーロッパでは庭に石窯を設置して、外で食事を楽しむ人も多い。確かに、美しい景色を見ながら、豊かな自然の中で食べた方が何でも美味しいですよね。

グランピング

いま、グランピング(グラマラス・キャンピング)がブームです。

風呂やトイレ、ソファ、ベッドなど、ホテル並みの設備を整えてある豪華なキャンプスタイルですが、石窯で焼いたカルツォーネをそうした環境で楽しめるようにしたいと考えてます。

相乗効果をどれだけ狙えるか?

<地>の概念はとても難しい。

考えれば考えるほど、あれもこれもと足し算したくなります。でも、ちょっと待て、、、掛け算じゃないと、望むような成果は出ないんじゃないか・・・?私は魚の流通の源流で学んできた経験もあり、魚料理も売りにしてみたらどうか?と考えていました。

それが、カルツォーネと掛け算になるならなお良い、、、

しかし、考えるほど疑問です。

これがたとえば、海の近くで店を構えるなら、いいかもしれない。ただ、カルツォーネと魚介料理の店?…お客様はどう思うだろう。

ちょっとインパクトにかけますよね。私は確信が持てない。

やっぱり、やるなら「カルツォーネ専門店」の方がわかりやすい。魚は看板にしないまでも、料理に取り込んだら良い。

いずれにしても、カルツォーネを食べるのに理想的な環境は?という視点で、景観や、建物、音楽、カトラリー、メニューに至るまで考えていけば、独自の空間は作っていけると思います。

ここをどれだけ考えられるかで、容易に真似されないレベルまで近づけるはず。

高級ワインも楽しめる洗練されたカルツォーネ

カルツォーネは安売りする必要はありません。

美しい景観と上質な空間が作れれば高級ワインのお供としても成り立つほど、質が高くなる。

それには、商品開発です。

カルツォーネはレストランでもテイクアウトでも、そして通販でも販売していきます。そうした道を作っておかないと、行き詰まる可能性がある。この開発をとにかく推し進め、ノウハウを積み重ねていくことで、さらに優位に立てると考えています。

孫子の「一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法」にならって「カルツォーネ専門店にした場合この事業は100年続けていけるのか?」根本のところを考えています。

<将>について。はどう考えるべきか?

理想のリーダー

将とはリーダーのことです。カルツォーネを核として100年持続させる事業では、どんなリーダーが理想か?

ということを考えます。

これからの時代は、AI技術の発展により多くの労働でその生産性は機械に負けてしまいます。計算しても作業しても記憶しても分析しても、人より機械の方が正確だし、圧倒的に早いのです。

そんな時代に人ができることとは?

リーダーに求められることは数あれど、以下の3つを当レストランとしては考えています。

①人を育てる

②創意工夫する

③相手の立場に立つ

人を育てる

カルツォーネ専門店は、とがった絞り方と訴求が強みなので、お店をどんどん拡張して事業を伸ばしていく構想ではうまくいきません。

少ない人数でチームを作り収益を上げていく。小さくても強いお店を目指すのが無難です。理由は、未来の人口構造から飲食店の需要自体が減り、過当競争に巻き込まれる恐れがあるからです。リスクは最小限にすべき。拡張より内部を強くし、少ない資源で、最大の成果を上げていく。

となれば、強みは「人」です。それには人を育てることが欠かせません。

他人のことは無関心という時代の空気を感じることがありますが、それではいけない。人を育てることは、人にしかできない。機械にできることが多くなる程、その意味は強く、深くなります。

先だって書きましたが、「人を育てることは最大の恩返し」というのが当レストランの教育理念です。

創意工夫する

ポイントは、

・カルツォーネの品質をどれだけ高められるか?

・カルツォーネの生産性をどれだけあげられるか?

・カルツォーネの商品開発をどれだけ出来るか?

につきます。

人で勝負するのですから、日々、これらを軸に創意工夫し磨いていかなければなりません。これが少子高齢化社会で、ロボットに負けない闘い方になる。特にチームを率いるリーダーはこれを考えることができなければ、皆を不幸にしてしまいます。

相手の立場に立つ

孫子のよく知られた言葉に

彼を知り己を知れば百戦してあやうからず

という一文があります。戦において、相手の実力と自分の実力を知っていれば負ける気づかいはないということですが、この意味は本当に深い。私も常にこのことを意識しているのですが、失敗するときは必ず、どちらかが欠けています。

彼を知らないか、己を知らないか。

相手を見て、その先を見る

カルツォーネを取り巻く環境も、いまと10年後では大きく変わっているかもしれません。

開業するレストランがカルツォーネの火付け役となって、一大ブームになり、競合店が一気に増えることだって考えられます。そうなっても負けない体制づくりが必須ですが、勝ち続けるためには、競合店がどんな目的で、どんな戦略でもってやろうとしているのか知らないと足元をすくわれる可能性だってある。

常に時代を読み、攻められる心配はないか周りを見、自分たちの強みと立ち位置を知っておかなければなりません。

また、相手の立場に立つということは、お客様の立場にも、スタッフの立場にも、立てなければリーダーは務まらないと思います。

松下幸之助さんが提唱しているように「全員経営」で運営していけるようになることが理想。小さくても強いチームには特に、この意識が大切だと思うからです。

孫子は「不敗の地」に立つことを説いています。敵が仕掛けてこようとも思わないような、強さを持てということです。優位になるところでは圧倒的に優位に立ち、劣勢な場面では戦わない。

「小さくても強いお店」と先だって書きましたが、そんなチームが勝っていくには、自分たちの優位な場所で勝負すること。広大な平地や辺り一面敵だらけのところで戦っていては、囲まれたら最後です。敵は少なく、四方は守られていて、攻めるポイントは圧倒的に強い。

カルツォーネ専門を孫子の兵法で分析するというテーマですが、「法」は100年経っても優勢でいられるように、小さくても強い組織を創るには?と考えていきます。

100年続く組織

そもそも100年続く組織ってどんな組織だろう?

同じような疑問を持って調べた人は結構いるようで、インターネットでも出てきますが、それらをまとめると「人を大事にする組織」「時代により柔軟に変容できる組織」というのが2つの大きな理由だと見ました。

中でも<法>について私は知りたかったのですが、考えてみれば、法とは時代により変わります。社会における広義のルールと当レストラン独自の狭義のルールにおいてもひとつひとつ判断が必要です。

それを今、核メニューをカルツォーネにしてはどうかと検討している段階で、決めていくのは時期尚早でしょう。

ただ、100年持続させるために私が考えていたことはそうずれてないだろうと思いました。私の教科書は「孫子」です。孫子はやっぱり、すごい。負けない為にどうしたらいいかを100年36,500日考え続ければ、必ず続く。

理念を持ち、当レストランのスタッフになる人たちに理解してもらえるよう、お店作り、人材教育、商品開発、利益分配、すべてにおいて一貫させればいい。

ここまで、考え続けた「カルツォーネを孫子で分析する」ことこそ、持続するために必要なことなのではないか?

孫子の五事

<道>はその大義を。

<天>は時代を読むことを。

<地>は他に負けない強みを。

<将>は心がけを。

<法>は組織づくりを。

それぞれ、ことあるごとに深めていき、更新していく必要があると感じています。

<道>の動機は強ければ強いほど良く、<天>は成功確率を高め、<地>は何に力を入れたら良いかが明確になる。<将>は人の器を大きくし<法>は組織を作っていく。

まとめ

結論。カルツォーネは、100年持続させるための核メニューとしてそん色ないメニューであると確信しました。

ただ。大きな問題が。。。

開業資金がかかるということです。それに、開業するまで、石窯で作ろうにもその環境にない。

レストランで提供すれば絶品でも、テイクアウトで持って帰って、本当に美味しいの?とも思います。

さらに、通販で、販売することって、実際、どうなの?ほとんどの過程に石窯なんてないし、オーブンで代用可能なの?冷凍で発送するなら、それなりの設備って必要なんじゃないの?

…悩みは深い。そんなたくさんの課題に、今すぐに、取り組んでいけません。いずれにしても、カルツォーネは持続可能性のある商品の1つであることはわかりました。実際にビジネス人なるかどうかは電卓で数字をはじかなくてはなりません。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

目次