レストランにとって「料理」は商品ではない理由

魚屋さんにとって、商品は何ですか?

と問われたら、「魚」と答える人がほとんどでしょう。

では、ディズニーランドが販売している商品は何だろう?

アトラクションを体験する価値?

それとも、楽しく幸せな時間?

他で味わえない、感動?

商品は何か?ということは、考えていくと意外と難しいものです。

魚屋は本当に「魚」を売っているのか?

魚屋にとって「魚」は商品に違いありませんが、もしすぐ隣に魚屋があったら「魚」は本当に商品となりうるでしょうか。

というのは、同じ「魚」を売っているとしたらどちらのお店で買っても違いはありません。

それの何が問題か?

たとえば、Aの店ではイワシが100円、Bのイワシは80円。

20円の差があったとします。

とにかく安い方が良いという人なら、Bの店で買います。

でも中には20円高くても、Bの店より鮮度がよかったり、梱包が丁寧だったり、スタッフとの会話が楽しみだったりすれば、Aの店で買うでしょう。

その場合、同じ「魚」であっても、Aの店は魚以外の<何か>が購買を左右する要因になっています。

お客さんが買う理由

どんな業界でも、市場(マーケット)があり、そこで価値の交換が行われます。

そのマーケットには、多くの場合、競合他社がいる。

もし、独占市場であれば「魚」だけ売っていればいいかもしれません。

しかし市場は、1社だけで存在するケースは稀で、その場合「魚」だけでは不十分になります。

理由は、競争原理が働き、お客さんは自由に選べるからです。

そうした中で、魚屋にとって「魚」が商品という考えでは競合他社に負けてしまうかもしれません。

お客さんが魚を買う理由は、「魚」だけではないということです。

そもそも「商品」とは?

「商品」とは何なのだろう。

言葉の定義では、「商売の品物」「交換に供する目的で生産した財物」などと出ます。

その認識では、魚屋にとって商品は「魚」といえる。

でも、その魚がその定義通り売れる為には、そこに「お客さんが買う理由」がないと売れません。

あなたのお店の商品はなんですか?

との問いに、魚と答えるのでは不十分なのです。

商品とは、即物的なものではなく、お客さんが求める交換価値であると私は思います。

レストランにとって料理は商品?

レストランにとっての商品は、魚屋に比べると、より複雑です。

商品が「お客さんが求める交換価値」であるなら、「料理」は商品にならない場合が多いでしょう。

一般的に考えても、「雰囲気」や「サービス」を合わせた「総合的な食体験」がレストランの商品といえると思います。

レビット博士の名言

ハーバード大学大学院教授で経済学者、レビット博士の名言があります。

人々が欲しいのは1/4インチ・ドリルではない。彼らは1/4インチの穴が欲しいのだ。

(People don’t want quarter-inch drills. They want quarter-inch holes.)

レストランに訪れるお客さんが求めているのは、様々な理由があるでしょう。

しかし「料理」だけでないことは容易にわかる。

マーケティングには消費者理解が欠かせないと森岡毅氏に教わりましたが、それがいかに大事であるか身に沁みます。

どうすれば売れるか?

そう考えていくと、売れるようにするためには「お客さんの求める交換価値=お店の特徴、強み」とすればいい。

マーケティング活動とはそうやって、お客さんの求める交換価値と、お店の特徴、強みをイコールにしていく活動ということなのでしょう。

その為に、市場を知り、競合他社を知り、社会を知り、経済や世界情勢から未来を読み解くことも求められる。

非常に実践的で面白い学問だな、と思います。

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