皆さんは、ワイン選びの基準をどのように判断されていますか?
お店のポップ?店員さんや、在籍しているソムリエさんに聞きます?
それもいいですね。ここでは、自分で、自分好みのワインを選べるようになるための独自理論をご紹介します。
好みのワインに出会えた時の喜びは、恋に似る
本当に好みのワインに出会えた時の喜びは、恋する相手に出会えたような思い出を飲み手に与えます。何年たっても、鼻孔をくすぐるほのかな香り、喉から胃へと染み渡る感覚を覚えている。
ソムリエとしての十数年の間に、幸いにも度々そんな場面に出くわしました。でも、もっとも達成感を覚えたのは、お客様に「そうそう、これこれ!!」と言わせたとき。料理でしたら、「これが食べたい」という明確なイメージがあるかもしれません。
でもワインの場合、あまりにも種類が多く、知識を要するので、よほど玄人でないと、そこまで至らない。だからお客様の多くは、自分の飲みたいワインを明確にわかっておられません。
ブルゴーニュ、と一口にいっても、エリアにより、作り手により、収穫年により、そしてまた、サーブする者のワインへの理解により、味も香りも変わるのです。(本当です!!)
ただ、相手に喜ばれるワインセレクトには、あるポイントがあります。
独自のワインセレクト理論
世界では数十万種のワインが作られているといいます。仮に50万種とすると、1日1本ワインを飲んだとしても、全種制覇するのに、なんと1388年かかる計算です。地球上の誰も、生涯のうちにすべてのワインを制覇することはできない。
そんな途方もない数のワインの中から、相手に喜ばれるワインをチョイスするのがソムリエの仕事のひとつでしょう。
ワインを分類する4つのマトリクス
お客さまと対峙した時、私は頭の中で4つのマトリクスを描きます。
こんな感じです。
横軸は、ワインの強さを表し、縦軸は感情のパロメータを表します。
実際は、同じカテゴリーのワインでも作り手やブドウ品種により、もっと細かく分類されてくるので、上記のマップはあくまでご参考までにお考え下さい。
ワインを知るという事は、このマップの<マス>を細かく細分化し、それぞれについて知識と見識を深めていく事なのです。
たとえば、このように。
マスを細分化し、それぞれに合致するワインを自分のデータとして積み重ねていく事で、よりピンポイントで、お客様の喜ぶワイン、感動させるワインを選べるようになったのです。
なぜ、数値で測れない感情を縦軸にするか
人は感情の生き物です。
何か大きな仕事を成し遂げて、気分が高揚しているときに飲みたいワインと、誰かとケンカして言い争いになった後、気を落ち着ける為に飲みたいワインと、まったく別物でしょう。
ワインの素晴らしさは、ワインというひとつのお酒のジャンルで、人の感情のどんなシチュエーションにも寄り添える包容力があることです。そして、ソムリエの仕事の基本は、ワインサービス以前に、接客業のプロです。
お客様をもてなして、お支払いいただく対価以上の満足を提供できなければ、意味がありません。
だからこそ、感情が軸になるのです。
リモートでワインをセレクトし、喜ばれるには?
しかし、ワインセレクトの4つのマトリクスは、お客さまと直に接しなくては分かりません。
実際にお話しして、表情を読み、どんな服装をしてこられたか、お客様の感情のベースと、好みのベースをおさえながら、その日の感情のパロメータを探っていくわけです。ですが、今の時代、リモートで自分のスキルを活かして、人の役に立つことは重要です。
自身も、シニアソムリエの経験を活かし、ワインを選んでさしあげるサービスを<ココナラ>で提供しています。直にお客様におすすめするのとは違い、4つのマトリクスの前にある前提が必要になります。
飲み手を知る
マーケティングの要は、「相手を知ること=消費者理解」だと思っています。ワインを選ぶ際にも、その視点が欠かせません。
つまり、飲み手は誰か?
ワインのギフト選びをサポートする場合、ワインの贈り先様は直接のお客さまではありません。ただ、喜んでもらわなくてはいけないのは、この方です。でも、相手の顔も何もわからない状態で、すすめようがない。
そこで飲み手の情報をあらゆる角度から収集します。私の場合は、下記を参考に判断します。
- ご予算
- 年齢
- 身体的特徴(背が大きい、ぽっちゃりしている、etc…)
- 服装の特徴(ネクタイは少し緩ませてつける、パーカーがすき、etc…)
- 特徴的なクセ(声が大きい、髪の毛をいじるのが好き、etc…)
- 話し方(ゆっくり落ち着いてしゃべる、早口、etc…)
- 好きな食べ物
- 好きな飲み物
これらの情報を整理しながら聞いていくことで、飲み手の感情のベースと、好みのベースを想像することができます。ただし、これらの情報で、ある程度わかるのは、十数年のソムリエ経験があるからこそ。
身体的特徴や話し方とワインの好みの相関関係など、実務経験の中で経験則として学ぶしか方法がありません。
長財布を持つ人と、折り畳み財布を持つ人では、明らかにワインの好みは異なりますし、声の大きい人と、眉毛の濃い人は好みが似る傾向があります。
ただ、上記のワインマトリクスは、相手のことをよく分かっている場合、有効です。ぜひご参考ください。