飲食店が押さえておくべき、4つの消費タイプ

人がモノを買う動機には様々な理由がありますが、消費の種類というと4つに分けられます。

1.安いから買う

2.高いから安心、信頼がおける

3.モノではなく、コトを買う

4.自分らしさを買う

これは、石原明氏の著書『絶対もうかる「値上げ」のしくみ教えます』から学んだことですが、この4つを抑えておくことは飲食店にとってとても重要だと思います。

「安いから買う」消費をターゲットにした場合

値段の安さ、そのものが価値として捉えられてお客さんに選ばれるタイプです。

安ければ安いほど売れる。

これは、本当でしょうか。

1000円のメニューがあって、売れないから800円にしたとします。

原価は300円です。

たしかに1.2倍、出数はよくなりました。

でも、利益額を計算してみると、、、

800円で120食売れた場合 800円×120食=96000円(利益額は、60000円)

1000円で100食売れた場合 1000円×100食=100000円(利益額は、70000円)

損失は、それだけではありません。

1.2倍分の労力、洗い物、人件費がプラスされますので、実際の利益額はもっと少なくなります。



販売数が2倍に増えたらどうか?

もし、先の例で2倍に増えたらどうでしょう。

計算すると、、、

800円で200食売れた場合 800円×200食=160000円(利益額は 100000円)

考えなければいけないのは、2倍売るためには宣伝なり工夫が必要になることです。

何もしないで2倍になればまだ良いかもしれません。

でも、価格を変えただけで2倍にするのは難しいでしょう。

たとえば広告を出すとすると、単純に2倍の労力、洗い物、人件費などに加え、広告費も必要になります。

それを維持するのも、100食売ればいいだけの場合に比べ、たいへんです。

むしろお客さんが増えて、行き届いたサービスや出来ず、料理の品質も落ちてしまうかもしれません。

クレーム対応に追われることになればそれこそ本末転倒です。

これが、「安いから買う」という消費ターゲットにした場合の末路です。

「高いから安心、信頼がおける」消費ターゲット

「高いから安心」という消費ターゲットは「安いから買う」という消費ターゲットと真逆です。

高いからこそ満足のいく美味しい料理と心行き届いたサービスが提供され、トータルで得をすると考えているお客さんになります。

先の例で、値上げしたとしましょう。

1000円で提供していた料理を、1200円にします。

すると、、、

1200円×80食=96000円(利益額72000円)

1000円のメニューを800円に値下げして、1.2倍販売した時の売上は一緒ですが、利益額は1.2倍。

1000円のメニューを100食提供するよりも、利益額は増えます。

もちろん、その分、労力は少なくて済み、大事な顧客サービスに時間を使うことができる。

日本の消費者は実は「安いから買う」人よりも「高いから安心できる」人の方が潜在的に多いかもしれません。

いま経済が右肩下がりだとしても、高度経済成長を経て、モノやサービスが一定のレベルまで達し行き渡った後なので「安かろう悪かろう」ものより、価値に見合ったものを期待します。

「モノではなく、コトを買う」消費ターゲットとは?

経済が満ち足りてしまった後の社会では、モノそのものの価値より、͡自分が感じる体験の価値の方が上回る場合があります。

レストランを選ぶ動機でいうと、美味しい、サービスが良い、よりも、ライブ演奏やソムリエとの会話、料理している人のライブ感を楽しみに来店するお客さんが、このタイプです。

「安いから買う」というタイプとは相いれません。

お客さんとのつながりを強みにするお店や、イベント・企画力で集客をする飲食店は、こうした͡「コトを売る」スタイルでやっていけるでしょう。

もちろん、提供価格を安くする必要はありません。

持続するためには、人間力を鍛え、情報収集し、学んだり、未来に投資する時間を作る必要があります。

それもコストとして提供価格にのせないと、むしろ持続できなくなり、顧客満足を損なう可能性だってあります。



「自分らしさを買う」消費ターゲット

自分の生き方や、意義にお金を費やすタイプが「自分らしさを買う」消費ターゲットです。

飲食店でいうと、3つ星レストランに好んでいく高級志向のお客さんのことです。

そういうと富裕層に多いような気もしますが、行きつけの店にしか足を運ばないお客さんもまた、このタイプといえます。

私が勤めていたレストランにもたくさんいらっしゃいました。

座る席が決まっていて、そこが空いてないと「またにする」というくらいこだわりが強いお客さん。

閉店間際に来店して、マティーニを飲んで帰るお客さん。

皆さん、個性ある飲み方、料理のオーダーの仕方をするので、印象に残ってます。

このタイプの方は本人が気づいているかどうかは別にして「自分らしくいられる」ことに対し、お金を払います。

選択してはいけない消費タイプ

こうして4つの消費タイプについて考えると、「安いから買う」という消費ターゲットには極力、合わせないことが飲食店の継続・発展には重要だということがわかります。

日本企業の多くが、未だに「安く売る」=「企業努力」と考えていることは社会にとっても大きな損失です。

日本のマーケットは、少子高齢化の縮小マーケットなのです。

安く売る、値下げするということは、購買数を増やさないといけないので、お客さんを増やす努力をしなければいけません。

100食作ればいいところ、200食作らなければならなくなります。

すると、人手が必要になります。

どんどん働き手が減っていて、働き方改革で労働時間が短縮されているのに、どうやって持続していくのでしょうか。

これからは、

2.高いから安心、信頼がおける

3.モノではなく、コトを買う

4.自分らしさを買う

という3つの消費タイプに合わせて、戦略を練っていく必要があります。

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