2020年以降、料理人が考えるべきことと、10のチェックリスト

飲食店を巡る環境は、大きく変わっています。日本は、2025年に3人に1人が65才という、超高齢化社会を迎えます。人口は、増えることはありません。

人類未踏の縮小社会において、料理人は何を考えるべきなのでしょうか?

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2020年オリンピック

2020年はオリンピックというビッグイベントがあり、国外から多くの流入を見込めます。

これが、唯一の光。ちなみに2025年は、大阪万博がありますが、まだ未知数です。2020年以降、実際的な需要が激減するはずです。

飲食店はもちろんのこと、すべての業種が備えを迫られていると思います。

算多きは勝ち、算少なきは勝たず

きちんと備えをしていないと、危ないと思います。

孫子の『兵法』にある言葉。

算多きは勝ち、算少なきは勝たず。しかるをいわんや算なきにおいてをや。

勝てる環境を整えている方が勝つし、そうでない方が負ける。まして、そうした環境と整えもしないというのはいわずもがなである。といった意味です。

超高齢化、縮小社会というのは、そういう状況にあるという認識をしとくべきです。

お客さんが求めていること

あるマーケターが言っていました。魅力ある飲食店があまりにも少ないと。時代は、どんどん変わってるのに、飲食店は変わらない。いつまでも味にこだわり、料理が美味しければ、お客さんが来てくれると思っているお店が多すぎる。

「モノ」ではなく、「コト」が求められるようになったと言われて久しいが、飲食店はいまだに「モノ」にこだわっている。

時代が変わったとは、どういうことか?

いまや、美味しい食材は、探せばだれでも手に入ります。流通はますます、自由度を増して、個人が、飲食店並みの仕入れをするのも可能になっていくでしょう。ごく一部の頂点にいる料理人は別にして、ほとんどの料理人にとって、そうした仕入れ環境は致命的です。

食材に拘る。という大きな売りの効果がなくなるからです。

主婦でも作れるプロの料理

そして、この情報社会で、秘伝のレシピというものはほぼ、ありません。主婦でも真剣にやれば、プロ並みの料理は作れるようになります。もちろん、商売となれば、いかに早くつくれるか、たくさんのお客さんをこなしながら提供できるか、または提供の仕方を工夫することにより、家庭では実現できないレベルに引き上げることはできます。

でも、それが何?と思いませんか?

家庭なら1000円で10000円のフルコースが作れるとしたら、わざわざ出かけていって、レストランで10000円を支払う価値があるのか。疑う方も多いはず。追い打ちをかけるように、中食文化はどんどん根付いています。

これは、高齢化社会を考えれば当然の現象でしょう。

お客さん自身も気付いていないニーズ

お客さんが何を求めているのか。そのニーズをつかむには、今を見ていてはだめだと感じます。2020年以降を見据えると、資源はこれから、どんどん目減りして、それに伴って食材の値段はあがります。

いま、日本では、年間約632万トンの食品が食べられることなく、捨てられます。これは、1日に日本国民全員分のご飯1杯が捨てられるのと同等の量だそうです。4人に1人が餓死する世界で、尋常ではありません。

資源が少なくなり多くの人が食べるものに困れば、必ず見直されるし、食料を捨てるのは<悪>という時代が来るでしょう。そういう中で、料理に何が求められるか?

それを考えるのが、算多きは勝ち、につながると私は思います。

料理人の武器は、創意工夫

こうしてみると、料理人がやるべきことは見えてきます。もちろん、ひとつではありませんし、色々な考えがあってしかるべきです。

ただ、社会性のない料理は、おそらく、淘汰される。

これからは、価値を創造できる料理を作れないと生き残れないと思います。

価値を創造できる料理とは?

これまで捨てられていた食材を見直したり、食材として利用されてこなかったものを、開発したり。たとえば、ミドリムシを食材に転換した企業がありました。株式会社ユーグレナさんです。

たしか、代表の方が掲げた理念が、ミドリムシで世界を救う!でした。ミドリムシは半永久的に増殖できますから、資源がなくなっても大丈夫。しかも、栄養満点。

実際に、ミドリムシクッキーなども販売されています。料理人もこうしたことに挑戦すべきかなと思っています。

料理の価値を高めるための10のチェックリスト

料理を作る。それは、とても尊い仕事です。禅寺では、料理人を「典座(てんぞ)」といってとても高い役職につけています。典座には、修行経験が深く信任のある僧が任命されてきたそうです。

食は、人の生命を養い、育てます。

食べる人のこころを満たし、悲しいときは慰め、嬉しいときはもっと楽しく、疲れたときは元気に。そしてまた、料理を通してしか得られない幸福感を、人は味わいたいと思います。

手間暇かけて作った料理があまりに安い!

美味しい料理をつくるには、どんなに才能がある人でも時間が必要です。技術も知識も経験も積み重ねなければ、お客さんに喜んでもらえる料理なんて作れません。お客さんに提供する一皿は、そんな試行錯誤や苦労や努力が積み重った上にはじめて仕上がるもの。

たとえば、日本のレストランで3年、イタリアに渡り3年、帰国して3年、修業を積んできたシェフのコストはいくらでしょう?それを一皿800円で提供した場合、そこまで努力してきた価値に見合うのでしょうか。

でも現実的に、これがいまのレストラン業界の実情で、マーケットに流されると、そんな値付けをしてしまうのも分かる気がします。

料理と料理地人の価値を上げる!

だからこそ、意識的に、どうやったら800円を1200円に、1200円を1800円に、1800円を2500円に!

売れるか?を考えなくてはなりません。一生懸命努力してきて、一皿800円という値付けはどういうことかというと、、、「私はこれまでたくさん勉強してきたけど、これくらいの価値しかないんです」と言ってるようなものですよね。お客さんの為とか、感謝を還元とか、いろいろ理由はつけられますが、それは自分への慰めにすり替えてるだけ。

一皿800円の値付けは、大手ファミリーレストランが徹底的に効率化して、はじめて実現できる価格です。お客さん自身、ファミリーレストランで支払うような金額よりも、それ相応の価格を支払った方が有難く思って食べるので、満足度も深いはず。

お客さんも納得する料理価値の作り方

なぜ、ファミリーレストランで800円の料理が、専門店では2500円なのか。お客さんとしても、お金を払う理由が必要です。それには説明しなくてはいけません。

私は、それを説明、もしくはプレゼンしていないレストランが多いように感じています。だから、値段を下げざるをえなくなる。お客さんも自然に納得する料理価値の作り方を、私は石原明氏の著書『絶対儲かる「値上げ」のしくみ教えます』(ダイヤモンド社)という著書の中からヒントを得ました。

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料理の価値を上げるの10のチェックリスト

料理を本来の価値で売るために、石原氏の著書を参考に10個のチェックリストを作りました。

1.手間暇をかけている

人手不足で効率化に向かう飲食店が多いので、今後ますます手間暇をかけた料理の価値は高くなります。

2.作れる人がすくない

インターネットの普及であらゆる情報が氾濫する中、希少性のあるものの価値は高くなります。

3.素材を専門家が選んでいる

ソムリエがワインを選ぶのと同様、魚であれば○○市場の目利が選んだ天然真鯛、というだけで違います。

4.料理、素材などに長い歴史がある

たとえばフランスの伝統料理には由緒あるメニューがたくさんあります。その価値を再現するなど、工夫できることがたくさんあります。

5.有名人・著名人が気に入っている

有名人・著名人の推薦があったり、お客さんとして通ってくれてたら、ラッキーです。もしお客さんの中にいなくても、あの人も大好きな料理、と関連付けることはできます。

6.実際に経験してきた(海外修業など)

海外修業してきた人は珍しくなくなってきました。しかし、その経験は伝えるだけで権威になります。

7.特許がある

調理器具を開発したり、独自の製法を編み出したら、特許申請すると権利を大手に売ったりと思わぬビジネスができるかもしれません。

8.開発ストーリーに誰もが驚く

開発秘話は、それが大変であればるほど、共感を呼びます。一生懸命やっていると、偶然のきっかけで出来たとか、面白く、興味深いストーリーは自然と生まれるものです。それをお客さんと共有できればいい。

9.公共機関や研究者も認めた根拠がある(身体にいいなど)

医食同源、という言葉がありますが、食は身体を作るので、医学と捉えることもできます。たとえば糖尿病の方向け管理栄養士監修イタリア料理を作ったら、糖尿病の人でも安心してパスタ料理を食べれます。

10.ほかでは決してまねできない

当たり前ですが、だれにでもできる料理が高く評価されることはありません。真似のできない領域までいくには、いくつか切り口があります。料理そのものではなく、お皿にこだわっても良いと思います。ほかでは決して真似のできない提供の仕方だって、考えることができます。

人の何倍も努力して作った料理を安く売らないでください

私は、人の何倍も努力して自分を高めてきた人が料理人に多いと思います。だからこそ、自分の価値を下げて、安売りしないでほしいと思います。安売りすると、お客さんをたくさんこなさないといけませんから、時間も奪われます。

すると、料理をもっと深めて勉強する時間もなくなるわけですから、悪循環です。

価値に見合った値付けをして、時間を作り、さらにお客さんを感動させる料理作りにいそしむ環境が作れれば、最高じゃないですか?

食材は有限資源である

私たちが口にする食材は、そのほとんどが有限です。肉も魚も養殖はできますが、無限に生まれてくるものではない。

すでに、73億人を突破した世界人口は、地球の資源が賄える限界に近づいています。人類は地球の持続可能なレベルを5割も上回るペースで資源を消費している。

野菜を育てる

敷地内で野菜を育てることは、やりたい、というより、資源の問題から、やらなくてはいけないことかなと思っています。

その中で、特徴を持たせることが出来たら良い。5つ候補を挙げると、じゃがいも、ルッコラ、バジル、なす、にんにく。多様な料理に使えて、育てやすいときいてるからです。

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