京料理は嚥下(えんげ)料理?その成り立ちと美意識

京料理を知る上で、面白い推測があります。京料理のベースは、嚥下(えんげ)食にあると。

その真相を探ってみましょう。

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わがままに応えた料理人

嚥下(えんげ)食とは、飲み込みや咀嚼といった嚥下機能の低下がみられる人の為の食事のことです。

京料理はもともと平安時代の殿様や、禅寺の高僧の為の料理でした。彼らは、管理された食事をとってるから、一般の庶民と比べると、長生きしました。でも年を取った彼らは、どんな料理を好むか?

食べやすく、消化に良い料理を好むようになります。料理人は、彼らのわがままに応え、様々な工夫をしたそうです。

だから、蕪蒸し(かぶらむし)という料理が生まれたんだ。という人がいました。蕪蒸しは、カブをすって、中にいろいろ入れて、葛をかけます。葛は、漢方薬の葛根湯。それが薬になる。

なるほど、と思いました。そういえば、京料理は柔らかく炊いたもの、食べやすく料理したものが多い。手間のかかる調理工程で、食材のカットも小さい印象です。

そういう理由があったのですね。

日本料理の美意識

一方で、日本料理においては、実際には手間がかかっていたり、複雑であったとしても、あえて何もしていないように見せるシンプリシティ、いわゆる簡潔さが評価されるといいます。ヨーロッパとは真逆の文化ですね。フランス料理では華美さ、優美さが求められます。日本ではあまりケバケバしく飾ると、下品だと思われる。

茶室はご存知ですか?

茶室を見たら、わかります。茶室は、掛け軸をのぞく一切の装飾品をおきません。なぜか?想像する余地があるからです。余計なものはとことんそぎ落とす。すると、心の風景が広がってくる。想像によってそれは、茶室でさえなくなります。畳4畳の空間は、100帖にもなれるし、宇宙に行くこともできる。

料理も同じだと思います。

単に素材をそのまま並べるだけでなく、華美な装飾にこだわるのでなく、その素材について深く考えたうえで、無駄な調理工程をそぎ落とすことが求められる。

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