野菜の美味しい料理法を科学的に学ぶ

野菜を科学的に調理すると、素材を活かすことができます。

「科学的に理解する」とは、それぞれの野菜がどんな特徴、おいしさがあり、欠点は何かをしって、好ましい特徴を引き立たせ、欠点を消す方法を知ることです。

なお、この記事では、下記を参考に、忘備録としてまとめました。

目次

蕪(かぶら)

アブラナの変種で、大根同様の香気がある。S-メチルシステインスルフォキサイドという成分がその香の原因。

これは水溶性で揮発しやすいので、香を保ちたい場合、湯ですぎないことが肝要。丸ごと焼くと保持される。

ゆっくり加熱することでデンプンがデンプン分解酵素によって分解し、甘み成分が増す。付け合わせ野菜としても使いやすい蕪。素材を活かす料理ポイントは、低温で調理すること

茄子

果肉にポリフェノール類が多い為、酸素によって褐変する。褐変を防ぐには、空気を遮断すること。

果皮の色素はアントシアニンで、水に溶け出す水溶性。余談ですが、アントシアニンといえば、ワインにも多く含まれます。

正しくは、ブドウの果皮に含まれるということですが、黒ブドウの果皮と共につけて醸造されると、赤ワインになるのは、なるほど、水溶性だからなのだと改めて納得。アントシアニンは、酸性にすると赤色、アルカリ性にすると青色になる。

また、加熱すると細胞が壊れ、溶出しやすくなる。ただ、アルミニウム、マグネシウム、鉄などの金属が存在すると色が安定する。たとえば、ミョウバンにはアルミニウムが含まれるので色が保たれる。

茄子の長所短所をしる

茄子は80度で加熱するとグアニル酸(シイタケに多く含まれる旨み成分)がもっとも増えるという。油による加熱が相性がいいのは、油により渋みの感じ方が弱くなるから。赤ワインと肉の相性が良い理由のひとつと同様、油脂によって渋みがマスキングされ、まろやかに感じる。

カットしてから水にさらすのは、ポリフェノール類が油に移行しやすくなるから。その代わり色素は溶け出す。果肉はスポンジ状になっているため、油を吸い込みやすい構造になっている。油をあまりしみこませたくない時は、調理前にその構造をつぶす必要がある。

塩をして水分を抜いたり、電子レンジで火を通しておくなど。

とうもろこし

なんといっても、あの甘さ(糖)が特徴。

糖は種子に運ばれ、種でその糖がつながって大きなデンプンになるが、一時的に種子にたまった糖が、その甘さの原因。でんぷんになる途中段階の糖の集合体は、水溶性多糖類で細胞外に出るととろみ材となる。

加熱した甘いにおいは、硫黄化合物系の成分。この成分は、乳製品と相性が良い。理由は、乳製品も加熱すると硫黄化合物が生成されるため、共通の香り成分があるからである。

ワインと料理の相性を考える際にも用いる考え方で、フレーバーペアリングというのがあるが、香に共通したものがあると相性が良くなる。

ゆず

ゆず特有の香りは、柑橘類に含まれるリモネン、リナロールに加え、6-ノネナールとユズノンというのが正体。

この成分は、アルコールや油に溶解するが水には溶けない。苦み成分は、ナリンギンやへスぺリジンで、この成分は水に溶けにくく、アルコールや油に溶ける。

苦み成分は、果皮の下側の白い部分に多い。

ということは、柚子の果皮をオリーブオイルに漬けておけば、香り豊かな柚子オイルができるし、ウォッカ等に漬けておいて、香水スプレーのような容器に入れておき、料理の仕上げにシュッとやれば、柚子の香る一皿ができます。

たけのこ

水煮たけのこの香は硫黄化合物とバニリン。甘く感じるのはそのため。硫黄化合物は加熱したとうもろこしにもあるので、香りが似ている。たけのこにグルタミン酸はほとんどなく、わずかに糖が含まれる。

味の特徴はえぐみ。ホモゲンチジン酸とチロシンによる。ホモゲンチジン酸はえぐみを感じさせる成分で、こんにゃくや里芋にも含まれる。

タケノコの場合、先端から根元にかけて、含まれる量は少なくなる。ホモゲンチジン酸の分解方法は、100度以上で60分加熱すると、30%分解できる。

また、油と一緒に味わうことで、えぐみがマスキングされる。料理をする場合、このホモゲンチジン酸をどう扱うかが重要になる。

トマト

香は、アルデビド類とケトン類。リコピンやカロテンから生成される香もある。

トマトに含まれる旨み成分、グルタミン酸をもっとも高めるには100度で加熱すること。60度で加熱するとグルタミン酸は減少するので、高温で一気に過熱する方が良い。

トマトの凍結濃縮

濃度の高いトマトウォーターを抽出する方法として、凍結濃縮という方法がある。

1.冷凍したトマトをピューレにする。

2.そのピューレを0度前後に置く。

すると、トマトのエキスを含んだ水溶液は凍結する温度が0度よりも下がり、凍結しないため、濃度の高いトマトウォーターが抽出されるという原理である。フレンチや日本料理で最近、流行ってます。

にんじん

にんじんに含まれる糖は、メイラード反応を起こしやすいブドウ糖などの還元糖よりも、ショ糖などの非還元糖が多い。カロテンを含むにんじんは、テルペンによる匂いを持ち、松葉、木ざい、油、柑橘類、テレビん油の匂いがある。

加熱するとカロテンが分解されすみれのようなにおいが加わる。

人参の香り

すみれの匂い、とは私は感じたことがなかったので意外でした。

私が好んで選ぶ赤ワインのブドウ品種のひとつ、サンジョベーゼの上質なワインには、すみれの香りがあります。ということは、先だっても軽く触れたように、フレーバーペアリングという似たような香りを持つ者同士は相性が良いという考えでいうと、にんじんと、サンジョベーゼは相性が良いということです。

これは新たな発見でした。

じゃがいも

香はピラジン類とメチオナールと呼ばれる成分や脂質酸化物。茹でるか、焼くか、身か、皮かによって、それぞれの成分の割合が異なる為、香りも変わる。

じゃがいもの糊化温度は58-66度。糊化とは、でんぷん粒子が水分子を吸収して微結晶構造が崩れ、でんぷん粒子が柔らかいゲル状になること。

55-60度で20-30分加熱すると、ペクチンメチルエステラーゼという酵素の影響で、細胞壁のペクチンが硬化する。糊化を防ぎたい時は湯がいた後冷水に落とすか、長時間水にさらすこと。水にさらすと、細胞膜のペクチンが水中のマグネシウムやカルシウムと結合し不溶化する。

それにより細胞内のでんぷんの吸水が妨げられ糊化しにくくなる。

だいこん

辛みの原因は、アリルイソチオシアネートという成分。酵素反応によって生じる。生ですり下ろすなど、細胞が壊れる操作によって酵素反応を起こす。柔らかく調理する方法は2つある。

ひとつは冷凍して細胞間の水結晶を膨張させ、細胞を壊す。もうひとつは加熱により、細胞壁の接着剤であるペクチンが溶ける。

しいたけ

しいたけに含まれるグアニル酸は加熱によって酵素が働き生成される。

なお、しいたけには、グアニル酸を生成する酵素と、分解する酵素も存在するためコントロールしなければならない。グアニル酸の生成酵素は60度前後まで熱に安定で、しいたけの傘のひだ表層に分布している。一方、分解酵素は、40度で熱に不安定で、傘の上部表層に分布する。

水と混ぜてペーストにし、60度で保温した実験では、生シイタケでも乾燥でも、保温10分後にグアニル酸は速やかに上昇し、10分以降減少した。要は、40度までを速やかに通り過ぎ、60度を超えずに熱を加えると、グアニル酸を最大限ひきだせるということである。

ちなみに干しシイタケを水に戻した時の香り成分はレンチオニン。水、アルコールには溶けにくく、油には溶けやすい。

最後のスパイスはやっぱり人

でも、本当に美味しくするのは、科学ではない。最近はそう思います。

人。誰と食べるか?どんな演出の中で食べるか?どんなストーリーの中の料理なのか?

感動は、きっと、そんなところから生まれる。

目次