独自の料理設計で、ここでしか味わえない体験を提供する

料理の設計5大要素を、ご存じでしょうか?99.999%の方は、ご存じないはずです。

なぜなら、私が勝手に定義づけたから(笑)

その料理の設計5大要素とは……

目次

料理の設計5大要素

料理を設計するために考えるべき要素は、5つあると考えています。

1.デザイン
・・・思わず写真を撮りたくなるようなデザインか?
2.香り
・・・食べる前から食欲をそそる香りを放っているか?
3.味わい
・・・五味(「甘味」「酸味」「渋味」「塩味」「旨味」)と食感の表現バランスはどうか?
4.価格
・・・その料理に自分なら最高、いくら払えるか?
5.独自性
・・・どこかで見たような、食べたような料理になっていないか?1.デザイン

以上、5つです。

これをもとに、設計した前菜が「たこぼっつのジェノベーゼ」。

「たこぼっつ」とは、タコの胴体(見た感じは頭)のことで、南北海道の漁師町で「ぼっつ」とか「ぼっち」とか、呼ばれます。北海道で採れるミズタコ(北海たこ)は世界一大きくなるタコの一種で、大きいと40kgくらいのサイズが普通に水揚げされるのですよ。

足など、男性の腕ほどの太さがあります。私は実は、水産加工会社に津とてめていた時期があり、そんな大ダコと格闘した経験があります。

なので「ぼっつ」もとても分厚い。それをサッと湯通しして、皮をむき、薄くスライスします。すると、平べったいうどんのようになるんですね。そのスライスした「たこぼっつ」とイタリアンの定番ソース「ジェノベーゼ」を合わせた前菜です。

デザイン

料理名は「たこぼっつのジェノベーゼ」ですが、実際にお客様に提供するときには「北海道の腕っぷし漁師が取ってきた大タコぼっつの冷製ジェノベーゼ、カプリ風」など、工夫するでしょうね。

というのも、ジェノベーゼソースと合わせたたこぼっつを、くり抜いたフルーツトマトを器にして、提供しようかなと考えているのです。

やはり、盛り付けは、写真映えする方がいい。薄いせんべいのようにして焼いたパルミジャーノチーズを飾ってもいいかもしれません。トマトに盛り付けるので、ジェノベーゼソースには隠し味で、大葉も混ぜようと思います。アクセントで、ローストしたヒマワリの種。

皿は、青と白で、海と砂浜をイメージしたデザインでどうでしょうか。

香り

大葉を使ったジェノベーゼソースはとても爽やかで、すがすがしい香りがします。

ジェノベーゼソースとはもともと、バジル、にんにく、松の実をすりつぶし、オリーブオイルを加えてペースト状にしたもの。そこへ、大葉もペースト状にして加え、タコがより、爽やかに引き立つように工夫したのが、独自のジェノベーゼソースです。たこ特有の香りとも相性が良いんですよね。

香りはそれだけでも良いのですが、少しだけハーブのサラダを添えて、梅肉とレモンのドレッシングもいいかもしれません。

味わい

五味(「甘味」「酸味」「渋味」「塩味」「旨味」)と食感の表現バランスはどうか?

甘味で強調したいのは、北海たこ特有の甘さです。真だこよりも甘味も旨みも強いので、それを引き立たせるために、ジェノベーゼソースにほんの少し、レモン果汁を加えます。これが甘味と酸味のメインの構成。

渋味はこの料理に表立って感じませんが、ローストしたヒマワリの種と、オリーブオイルから来る香ばしい渋味は、より味わいの構成を深くしてくれるように思います。

塩味は、たこにも含まれますので、調味料としての塩は極力抑えます。

旨味の表現は、狙いとしては、たことトマト、オリーブオイル、焼いたチーズにより、コクを持たせ、奥行きを出すイメージ。

これらのバランスは、全体的にまとまっていると思うのですが、実際のところ、どうでしょう。今のところ、満足できるレベルですが、もっと、旨い!と確信をもっていえるまで、改善は必要でしょうね。

食感

味わいの中で、食感も大きな構成要素のひとつです。

ローストしたヒマワリの種とチーズを入れたのは、この料理になかった、渋味や、旨みの相乗効果をプラスするためでもありますが、もうひとつ、食感を加えたかったのもあります。

柔らかく弾力のあるたこの食感だけでは、単調すぎると思ったのです。こうした食感の不均質さを「ヘテロ感」と呼ぶそうですが、そのバランスにより、美味しく感じることがあるのだそうです。

ただ、もっとふさわしい素材があるかもしれない。ドライフルーツも良いかもしれません。

価格

価格は5大要素の中でも、最も重要な要素です。まだ味わっていないお客様にとっては、それがすべての基準になる。

価格設定は、低すぎてもいけません。本来の価値より安価であると、価格以上の価値を見出すことは少なくなるからです。もちろん高すぎれば、お客様を怒らせる。それ以上でも以下でもない、本質的な価格があるはずです。

目安は、原価率30%で、と思っていますが、本当なら本質から見て、設定すべきでしょう。

では、現状の「たこぼっつのジェノベーゼ」に、自分ならいくら払えるか?

美味しいし、独自性はある。美味しさの構造も、たしかだと思う。ただ、プロの料理人ならば、真似ることはできる・・・。価格は料理だけでなく、雰囲気もサービスも総合的な付加価値なので、料理単体から値付けするのは素人のやること。

基本は、対価に対して、お客様の感謝や期待が上回るくらいのものでなければいけないですね。

独自性

何をするにも独自性が大事。それが、当社の考えです。人と同じことをやっても意味がありません。事業を長く持続していくためには、市場を拡げておかないとなりませんが、独自であるほど、簡単に真似の出来ない市場であるほど、優位に立てます。

料理においても、とりわけ、看板メニューとなる料理(スペシャリテ)も同様だと思います。他のどこでも食べれない料理。ここでしか表現できない料理。

そういった意味で「たこぼっつのジェノベーゼ」はまだ未熟ですね。独自性はあっても、優位性は低い。

しかし、上記5つの料理設計において、市場価値があるものを作れれば、選ばれる理由を作ることができます。ビジネスはどこまでいっても、他社評価。自分がどれだけ「うまい」と思っても、お客様が来てくれなければ意味がありません。前提としてお客様に選ばれないと、生きれない。

ビジネスは、戦争だ。とプロギャンブラーが言ってました。勝つためには選ばれる理由を作るのが、重要です。

目次