赤ワインと魚料理。
今でこそ寿司と赤ワインの組み合わせも知られていますが、魚料理に赤ワインは合わせにくいと思われがちです。
実際に赤ワインに含まれる鉄分(二価鉄イオン)が魚介類の脂質の酸化を促し、生臭さを発生させるというメカニズムが解明されています。白ワインにも二価鉄イオンは含まれますが、赤ワインほどではありません。
ただ、オリーブオイルなどの油を加えると、生臭さを抑えられるということがわかっています。たとえば、お刺身と白ワインを合わせる時、オリーブオイルを少量垂らすだけで、グッと合いやすくなる。
私がこつこつと研究していきたいテーマは、赤ワインと魚料理。
それも一部の限られたコアなワインファンだけが楽しめるマニアックな魚料理ではなく、飲まない人でも美味しく楽しめて、赤ワインが一緒であれば尚美味しい、魚料理です。
応用がきくように、普遍性を求めていきます。私の歩みは、常に努力と工夫で道を開く。
ワカシの赤ワイン煮込み
さて、関東ではワカシ、関西ではツバスと呼ぶ魚がいます。出世魚ブリの幼少期の呼び名です。
全長20-30cmの魚体を、そう呼びます。ちなみに70cmを超えるとブリ。
とはいっても漁師さんや浜の人たちはそんなこと気にしません。小さくても「脂のってるからブリだべ」といいます。
魚の赤ワイン煮込みは美味しくできるか?
このワカシを赤ワインで煮込みます。
着想は、和食の煮つけとフレンチのムニエルの技法の融合。まず3枚に卸して、フィレを2等分にし、うすめに塩、こしょうをして、10分ほどおく。ペーパーで水分を軽く拭き取って、粉をまぶし、オリーブオイルと、バターでムニエルにします。(ムニエルとは、粉をまぶして、バターで焼くこと。)
そこへ、赤ワイン、ブイヨンスープ、醤油、みりん、トマトコンカッセ(サイコロ状にカットしたもの)を入れ、アルコールが飛んだら火を弱め、落しブタをして、10-15分。
ツバスだけ取り出して皿に盛り、鍋に残ったソースにバターを少し入れ、煮詰めて、それをソースにします。この方法だと、赤ワインと合わせるのに失敗がなく、子どもさんでも美味しく食べてもらえます。
魚の種類、身の厚み、鮮度によっては、煮込み時間を変える必要がありますが、簡単なのでよかったら試してみてください。旨いですよ。
ただひとつ、気になるのは、魚の繊細さを活かした料理としては、改善の余地があり、無理に赤ワインに添わせている感があるのはいなめません。
どうすればもっと美味しくなるのか?ベストを追求していきます。
カワハギの繊細さと赤ワイン
5年前、堤防釣りに良く出かけました。11月の朝4時くらいだったでしょうか、やたらとカワハギが釣れたことがあります。これがちょっと不思議でして、何度もその場所には通っていたのですが、カワハギが釣れたのはその時だけなんです。
狙っていたのも、メバルとか、カサゴでした。
それはさておき。
そのカワハギ、一尾300g~400gくらいの小ぶりでしたが、肝がパンパンに入っていました。カワハギは肝が美味しい。肝は酒で臭みをぬいて裏ごしして醤油にとき、刺身をその肝醤油につけて食べるのが一般的です。これが最高。
カワハギと赤ワイン
そのカワハギを、赤ワインに合わせようと思い立ちました。
もちろん、鮮度は抜群です。
肝を取り出すと、こんにゃくゼリーのように、ぷるんと、しっかりしていました。鮮度が悪いと、だらっとして、血なまぐさい。カワハギの身は、こりこりした歯ごたえがありますが、味わいは繊細です。
3枚におろして、2mmくらいの厚みでそぎ切りにし、口に含むとほのかに甘い。より質感を高め、凝縮させるためにうすーく塩をして20分くらいしめておきました。肝は日本酒に10分漬けて、それから表面だけさっとボイル。10秒ほどです。
新鮮なので生のままでも良いかと思いましたが、より赤ワインとの精度を高めるために、臭みを抜くことにしました。
それから裏ごしし、オリーブオイルを含ませます。塩でしめたカワハギは柑橘類でマリネします。その時は、たまたま手元にあったのでブラッドオレンジを使いました。もちろんオレンジやグレープフルーツでも良いです。
皮を剥いて、房ごとにカットし、果汁をしぼって、カワハギの身を入れ、2~3分マリネします。塩、胡椒で味を整え、裏ごしした肝、パセリ、にんにくのおろしたのをほんの少し入れて、30分ほどなじませる。仕上げにあらびき黒コショウを少し挽き、頂きます。
これが、素晴らしかった。大成功でした。
赤ワインは何でも合うわけではありません。かなり相手を選びますが、たとえば、ニュージーランドのピノ・ノワールなど良いですね。繊細さと、温かみがある味わいで、きれいな酸を持つ、安いけれど、価値あるワインが多いんです。
良いカワハギがあったら、当レストランの前菜でもぜひ提供したい料理です。
うなぎの赤ワイン蒸し
うなぎ。時々、無性に食べたくなりますよね。でも、二ホンウナギは絶滅危惧種なんですよね。
国産の鰻は一時に比べると3倍の値がつくようになりました。先日、若干の後ろめたさを残しつつ、数年ぶりにウナギを食べたのです。かば焼きよりも白焼きよりも、私が好きな料理は、赤ワイン蒸し。
作り方はとても簡単。
うなぎの赤ワイン蒸しレシピ
スーパーで市販のうなぎを買ってくれば、あと必要なのは赤ワインとバターだけ。
フライパンに鰻をいれ、添付のかば焼きのたれ、山椒を加え、赤ワインを5mmくらいになるよう注ぎます。強火で火をかけ、落し蓋をして5分。うなぎはふっくらと柔らかくなってるので、そーっと鰻だけ取り出し皿に盛り、フライパンに残った赤ワインにバターを加え、とろみがつくまで煮詰めて、これをソースとします。
これで完成。最高にうまいですよ。
うなぎに合わせる赤ワイン
ワインはもちろん、赤を合わせます。どういうワインが良いかというと、スパイシーさのあるミディアムボディの赤。産地は、南仏や南イタリアがよさそうです。渋みは強すぎず、丸みのある味わいの赤ワインがよくあいます。