技術とは何か?
技術が必要になる背景には、一定の条件があるのだろうと考えました。
たとえば、魚をきれいに早く、美味しく捌くには技術が不可欠。
なぜかな?と考えると、魚と一口に言っても、まぐろも、サバも、鮭も、タイも、めばるも、あんこうも、魚。
魚種は、世界中に2万5千種類あるといいます。
もちろん、食材として手に入り、料理する魚は100種もないかもしれません。
そのうち50種を年間を通して料理するとしても、お客様に提供するまでにはあらゆることを考えます。
魚の構造による違い、大きさ、鮮度、脂乗り、料理としてどう提供するか。
それらを考えた上で、包丁は何を何種類使うか、その包丁の研ぎ具合はどのくらいがベストか。
そうして考えていくと、ありとあらゆる組み合わせがあり、一生かけてもすべての組み合わせを試すのは不可能だと思われます。
どのような技術も、必要になるにはこうした背景がある。
技術を持つ者の強み
AIはおそらく、それらの最適解をビッグデータから導き出すことはできるでしょう。
でも現実的ではありません。
構造や大きさ、鮮度に応じた50種の魚を最適に捌くのに、膨大な開発費と設備が必要になります。
人なら、包丁一本で実現できる。
そしてきれいに、早く、美味しく捌くにはそれなりの経験値が必要になってきます。
ということは、誰かが真似しようと思っても、簡単には追い付けないということ。
ビジネスは競争ですから、参入障壁は高ければ高い方が良い。
技術を持つ強みは、ここにあります。
ただし、どれだけ習得するのに困難な技術であっても、AIやロボットで代用できるようなものは取って代わられますから注意が必要です。
技術を極めるには
技術は、極めれば極めるほど、誰も追いつけなくなり、独自性が強くまります。
そこにマーケットがあるなら、極めるべきでしょう。
それだけでひとり勝ちできる。
その技術を極めるには、どうすればいいのか。
魚を、その構造や大きさを理解して、最適な包丁を選び、美味しく捌くにはそれなりの場数、経験値が必要です。
でも、いくら経験年数を積んでいても、浅い思考のままだと、必ずどこかで頭打ちが来る。
どこまでも技術を高められる人と高められない人の違い
いわゆる職人、と呼ばれる人でも、その仕上がりには差が出ることを、私は知っています。
ある一定レベルで、止まってしまう人が多いんですね。
魚を捌く技術に限って言えば、その差はどこに出るかというと、包丁に出ます。
おそらく持っている包丁の種類が違うでしょう。
何より大きな差が出るのが、研ぎの仕上げ方です。
魚の構造、大きさ、処理の用途、料理につながる仕上げに適した包丁を用意しているか。
そもそも、考えているか。
その差が、包丁にでるのです。
同じくらいの経験値を積んだ人同士が刺身を作るとき、出刃包丁、柳葉包丁のみで仕上げる職人もいれば、頭を落とす出刃包丁、身を卸す用の身卸し包丁、皮を引くために研ぎを甘くした皮引き包丁、それから刺身を造る用の柳葉包丁と4つ用意する職人もいます。
技術とは、経験値×思考の深さ
技術を極めようと思う人に、天井はありません。
どこまでいっても、終わりはない。
なぜなら、思考が深いからです。
魚の構造による違い、大きさ、鮮度、脂乗り、料理としてどう提供するか。
それらを考えた上で、包丁は何を何種類使うか、その包丁の研ぎ具合はどのくらいがベストか。
ありとあらゆる組み合わせがあり、一生かけてもすべての組み合わせを試すのは不可能だと言いましたが、それを探求しているのです。
技術とは何か、どうすれば極められるのか、どうすればAI時代にひとり勝ちできるのか。
と考えたら、技術=経験値×思考の深さ。
という結論に至りました。