マクドナルドではパンの厚み、気泡の大きさまで決まっている!?

藤田田氏をご存知でしょうか?

日本マクドナルドを創業した名経営者で、氏を尊敬する経営者も多い。私は藤田氏の文章が好きなので、ふとした時についつい読みふけってしまいます。

そして、いつも気付きがある。ちなみに、あなたは、マクドナルドのハンバーガーはバンズの厚みから、パン生地の気泡の大きさまで決まっているのは知っていますか?シェイクを吸うストローの吸い口にも秘密があるのはご存じですか?はたまた、本国アメリカでは「マクダ―ナルズ」ですが、「マクドナルド」とした理由は?

藤田氏は、あらゆることを科学的な根拠をもって、組み立てています。早速ご紹介しますね。

目次

「ありがとうございます」の後になんて言う?

たとえば、入店されたお客さんに「ありがとうございます」と笑みを浮かべて言う。すると多くの人は、瞬間的に催眠術にかかるそうです。

その間、3秒。

催眠状態にあると、命令を受けても反対しない。だからマクドナルドではマニュアルで「ありがとうございます」の後にはすかさず、

「コカ・コーラはいかがですか?」「ポテトはいかがですか?」と付け加えます。

お客さんは思わず、「OK」となる。

科学する心がけ

パスタを食べる時、人がもっとも美味しく感じる温度は何度か?

一流イタリア料理店でも、この問いに答えられるお店は少ないでしょう。ソース量に対し、何%のパスタ量がベストなのか?脂質とパスタの太さの関係は?

藤田氏は、マクドナルドにおいて、あらゆることを数字で示し、科学的な根拠を求めました。ハンバーガーと一緒に勧めるコカ・コーラの温度は摂氏4度がもっともうまい。といったことを分かったうえで、4度に設定しているのです。

マクドナルドのバンズの厚さが17ミリである理由

マクドナルド・ハンバーガーのバンズの厚さは17ミリと決まっています。

なぜか?

人の口に入った時に、いちばん美味しいと感じるパンの厚さだからです。しかもパンの気泡は、5ミリが良い、ということまで突き止めている。だから、マクドナルドのバンズは5ミリの気泡でできているんだそうです。

もちろん、バンズに挟むバーガーにも美味しい根拠がある。肉を焼く鉄板の厚み、ベストな表面温度と、焼成時間。すべて、もっとも美味しいとされる基準があります。

こうした「科学する心が儲かることにつながっている」と藤田氏は言います。逆にそこまで突き詰めなければ、マクドナルドの成功はなかったのでしょう。

1か月で9500万円売り上げた伝説の飲食店

それは1982年8月。神奈川県、江の島。9500万円という驚異の数字は、それを叩き出した本人も驚かせたようです。

その飲食店とはもちろん、マクドナルドの事。藤田氏は、驚異の数字をたたき出しました。

決して好条件ではなかった

その年は冷夏で、海水浴の客も少なく、江の島店はロードサイドにあり、駅からは1キロも離れていて、歩行者は皆無。決して、好条件とはいえません。にもかかわらず、何故、前代未聞の売上をたたき出したのか?

藤田氏には勝算がありました。

リサーチしたところ、歩行者は少ないが、店の前を1日に1万4000台の車が通ることがわかったのです。かといって、車で来店するお客さんだけを相手にしていては、儲けは期待できない。

「車で走ってきて、車に乗ったまま注文し、そのまま注文の品を受け取って走っていく」

これでなければダメだと思ったのです。

ドライブスルーの誕生

藤田氏は松下通信工業とソニーに頼んで、テレビ電話で注文を取れるシステムを開発してもらいました。車に乗ったお客さんはテレビに向かって注文し、車に乗ったまま商品を受け取って帰る。そう、お察しの通り、これが、ドライブスルーの誕生でした。

当時は、もしかしたら今以上に時間に追われていたのかもしれません。「忙しい現代人に受けた」と藤田氏は語っています。

客数を計算してみる

さて、月商9500万ということは、どのくらいの数の人が来たのか?

単価は500円とすると、、、9500万円÷500円=19万人!?1日あたり、19万人÷31日=6129人!

これだけの人数を店内には収まり切りません。おそらく半分以上ドライブスルーからの売上だったのではないでしょうか。

GDPが大きくなると時間が不足する?

1982年いうと、今から37年も前の話です。当時は高度経済成長のピーク時。国は豊かになるのではなく、時間不足になっていました。時間不足になると、未来のことを考える時間が減ります。

いまの状況は、そうした環境から徐々に追い込まれてきたのも原因のひとつかもしれません。藤田氏は、GDPが大きくなると時間が不足する。といってますが、現在GDPは減っても、時間が不足しているように思います。

それはなぜか?

人の能力が低下したのがひとつ、それと、ライフスタイルが複雑化したのが理由ではないかなと考えます。

ずば抜けて成果を上げる!

1か月で9500万。そこまでずば抜けて成果を出すには、どうするか?1982年ごろ、飲食店ではお店の箱にとらわれて、その中でしか物事を考えられませんでした。その枠を外して、ドライブスルーという新しい発想を組み込んだ時、イノベーションが生まれた。

爆発ヒットしました。

従来の枠組みにとらわれている限り、並みの成果しか上げれないということでしょう。ずば抜けて成果を上げるには、型通りではいけない。これからの少子高齢化縮小社会は頭脳戦になるでしょうから、経営者は時間を作って、考えなければいけません。

マックシェイクを飲むと懐かしい気持ちになる理由

世の中の99%の飲食店が「味」で勝負する中、「吸い込むスピード」で勝負した人がいます。

そう、藤田田氏です。

皆さんご存知「マックシェイク」。マックシェイクは、アイスクリームとソフトクリームとの中間、フローティング・アイスクリームと呼ばれる液体アイスクリームです。

マクドナルドでは、太いストローで飲みます。でも、ストローだと非常に飲みにくい。スプーンの方が食べやすいわけです。そこをあえて、太いストローで飲ませます。

もちろん、そこには、藤田氏の戦略がある。

おっぱいを吸うスピードが一番、おいしい

人が口に吸い込むときに最も美味しいと感じするスピードは、母乳を飲むスピードなんだそうです。母乳というのは、味は美味しくありません。36度の体温と同じ温度で、甘くもない。

なぜ、赤ちゃんがそんな生ぬるくて美味しくもないものを好んで飲むかというと、吸ったときに口に入るそのスピードが「うまい」と感じられるスピードになっているからなんだそうです。

マックシェイクは、なんと、吸い込むときにそのスピードと同じになるように設計されたアイスなのです。もちろん、ストローの直径も決まっているし、提供温度も決まっています。ストローを強く吸わないとたどり着けない適度な粘性と固さを作りだすために、絶妙な空気を含ませているようです。

マックシェイクを吸う時、人は赤ちゃんになる?

藤田氏は、マックシェイクを飲むお客さんの顔を観察してにんまりしました。

人間というものは、母乳のスピードで飲み物が口に入ってくると、瞬間的に赤ん坊時代の状態にもどるらしい。氏がみたところ「無念無想の状態」でマックシェイクを飲んでいる(笑)一度でも、マックシェイクを飲んだことがある人なら、覚えがあるでしょう。あの吸いにくさと、口に入った時の美味しさ。

そして時々、飲みたくなる郷愁感。それはつまり、マックシェイクを飲みたいのではなく、おっぱいを吸いたいという本能なのです。

銀座にマクドナルド第一号店を構えた藤田氏の野望を聞いて、驚きました。

ハンバーガーを売るんじゃなくて新しい食文化を売るんだと。日本人は米と野菜と魚を主食にしてきたから貧弱な体つきなんだ。これからは肉を食べて、頑強な身体にする。数十年後には金髪の日本人が町を歩くようになる。・・・というような事を言ったのだそうですよ。

マクダーナルズじゃダメな理由

マクドナルドは、1971年、藤田田氏によって、東京銀座にオープンしました。本社は、アメリカ。日本でオープンさせる際、読み方について、ひと悶着あったようです。

McDonald’sの正式な読み方は、「マクダーナルズ」。

本社はそのままの読み方でいくよう指示したそうですが、藤田氏は反対。「『マクダーナルズ』では日本人には発音し辛く馴染まないから、日本語的に3・3の韻になるように」と、マクド・ナルド、と読ませたといいます。本社が反対しても、藤田氏は頑として引かなかった。確信があったのでしょうね。藤田氏が銀座での開業に拘ったのも、同様の確信があったように思います。

というのは、銀座での開業も、アメリカ本社は大反対だったそうです。アメリカでマクドナルドは郊外を中心に出店し、成功を収めていました。だから日本でも、神奈川の茅ケ崎あたりが候補だったといいます。

しかし、水と文化は高いところから低いところへ流れていく。と藤田氏はいっていたようですが、「銀座が流行の情報発信基地だ、銀座で話題になれば商売も必ず成功する」 と、これも本社の要請を蹴った。

カッコいいですね。

マクドナルドはなぜV字回復したか?

爆発ヒットしたマクドナルド創業から43年。藤田田氏が創業したマクドナルドが、地獄を見ることになったきっかけは、2014年7月のことでした。期限切れの鶏肉使用問題が発覚したのです。

当時、映像を見た時はぞっとしました。色の変わった、鶏肉。床に落ちた鶏肉を平気で使う人。

中国の生産工場での一場面でした。さらに、追い打ちをかけるように事件は続きます。2015年に異物混入が相次ぎました。

ねじ、プラスチック片、ビニール・・

赤字は300億円まで膨らんだといいます。

2018年は235億円の黒字!

事の発端からわずか4年。見事、V字回復を果たしました。

さすが、藤田田さんの築いたマクドナルドだな、という感想を持ったのですが、そのV字回復の要因とは何だったのか、調べてみました。

お客さんが求めるマクドナルド像

ブランド価値を大きく損なったマクドナルドは、信頼回復の為に動き出します。

しかし、内部は混迷していました。お客さんが求めるマクドナルド像を、運営側はまったく把握してなかったようです。女性向けにアボカドバーガーを販売したり、ヘルシーをテーマにしたり、極端に値下げしたり、長く支持されてきたジャンクフード的なマクドナルドが本来提供する価値を見失っていました。

管理体制というのは当然強化されるべきですが、それだけでは収まりません。2014年の期限切れ鶏肉問題から、半年後の異物混入事件につながったのは、そもそもの原因が別のところにあったことを示唆しています。

原因は、人のこころにあった?

レストランに限らず、商売はお客様あってのもの。商売は、マーケットがなければ成り立ちません。マーケットというのは、人のニーズによって作られます。

マクドナルドに求めるニーズは、何か?

サラ・カサノバ社長は1年間で47都道府県すべてに足を運び、お客さんに直接、話を聞いたといいます。そういう中で、分かってきたのは、マクドナルドはお客さんを見ていなかった、ということ。お客さんはヘルシーさや過度な値下げを求めているわけではなかったんですね。

逆に、そうした企画がうまく運ばず、運営としても厳しくなってきた。相手のことを考える余裕がなくなってきました。

空気づくり

お客さんが求めていたのは、目新しい企画でも過度な値下げでもなく、ジャンキーな雰囲気。ボリュームがあって、その割に安くて、カロリーは気になるけど、なんかふっと食べたくなる。軽い「背徳感」だったんですね。

それが、ほんとうのニーズだったわけです。

もちろん、食の安心安全は欠かせませんから、土台になくてはなりません。そうした基礎を固めた上で、マクドナルドは「なんとなく入ってもいいかな」という空気づくりに注力しました。食肉偽造問題や異物混入の火消しにやっきになるのではなく、ポジティブな情報をどんどん流して、ネガティブな情報を上回るように、SNS、ネットニュース、雑誌などあらゆる角度から話題提供したんですね。

V字回復の具体的な施策

では、具体的にどんな施策をしたのか、見てみましょう。

ディスカウントしない

低迷期、極端なディスカウントにより、マクドナルドは集客していました。

ハンバーガー1個注文すると、もう1個ついてくる。ポテト半額。

こうした施策はカンフル剤です。売上はあがっても収益は下がる。100円利益があったハンバーガーを50円の利益で販売すれば、売る労力は単純に2倍になります。

それにかかる広告費や人件費を考えると、あまりやるべきではない企画でした。

レギュラー商品に知恵を入れる

健康ブーム、ヘルシーブームに流され、ベジタブルバーガーやアボカドバーガーを販売するなど目新しい企画で集客するのではなく、レギュラー商品で集客できないと持続性はありません。理由は、新しい施策はコストがかかるからです。

新商品は、気を引きます。しかし、一過性のものであったり、本当にそれがあたるのか、やってみないとわからないところもある。巨大企業とはいえ、300億円の赤字を出したマクドナルドは、体力がありあまっているわけではありません。

レギュラー商品が売れた方がはるかに効率がいいわけです。

ハンバーガー総選挙

そのために仕掛けたのが、マクドナルド総選挙でした。12のレギュラー商品の中で、どれが一番支持を得るのか?ダブルチーズバーガーはチーズをトリプルにする等、それぞれ、公約を設けてSNSなどで広くお客さんの参加を呼びかけました。

これ、素晴らしいアイデアですよね。

SNSで話題にさせる

もうひとつ、定番メニューのチキンナゲットを、ソースだけ変えて売るということもやってます。

その方法が面白い。「怪盗ナゲッツ」というキャラクターを作ったんですね。その新しいソースを狙って現れる正体不明のソースハンターが怪盗ナゲッツで、その目撃情報をツイッターに投稿すると商品があたるというキャンペーンをしました。

正体不明、といっても仮面の裏は「ゲッツ!」で有名な黄色いスーツに身を包むお笑い芸人。誰もが「ゲッツじゃん」とわかるものなんですが、この企画は大当たりしたそうです。すごいですよね。

新商品を出そうとすれば、食材を準備するために1年前から手配しなければならず、デビューまで時間もコストもかかりますが、こうした企画なら労力は10分の1くらいじゃないでしょうか。

マーケティング視点でみるV字回復の要因

上記はほんの一例です。業績回復までには、多くの施策を打ち出してます。

ただ、上記に共通しているのは何か、というといかに収益を圧迫させることなく、楽しくて面白い話題を提供するか?ということ。2014年から2015年に起こった事件は、消えたわけではありませんし、完全に信頼回復したかというと、そうでもないかもしれません。

しかし、マクドナルドに関する話題はいまや、ポジティブな話題ばかりです。マクドナルドに普段いかない人でも、機会があれば「マクドナルドに行ってもいいかな」と思えるのではないでしょうか。

こういう空気づくりが重要だったんだと思います。

施策は仮説と検証

そうはいっても、実際に打ち出す施策は何をすればいいのか。内部ではかなりの議論と摩擦と和解と改善が起こったと思います。その振れ幅たるや、相当なものだったと察します。

施策は、仮説と検証を繰り返し、ヒットした企画があれば、それを横に縦に展開した軌跡がうかがえます。

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