鮭やさくらます、紅鮭などサケ・マス系の魚が、自分の生まれた川に戻ってきて産卵することは良く知られてます。
でも、広い海を何年も旅して、どうやって帰ってくるのか。
不思議じゃないですか?
鮭は海に下る時、生まれた川特有の「ニオイ」を記憶に刷り込むんだそうです。
そして戻ってくる時には、そのニオイを思い出すことで、自分の生まれた川を特定します。
凄いですよね。
実はその仕組みについてはまだまだ謎が多く、解明されていないことも多いんですよ。
もっとも、ニオイで識別できるのは川の近くまで来た時で、日本の川からオホーツク、遠くはベーリング海まで約16000キロ移動するといわれる鮭が生まれた川に戻るには、地磁気などが関わっていると考えられています。
なぜ、海へ出るようになったのか?
そもそも、なぜ、川で生まれた魚が海へ出るようになったのか。
川にはいれない理由があったのだろうか、海に出なければならない、のっぴきならない事情があるのか、気になって調べてみたところ、面白いことが分かってきました。
勝者と敗者
たとえばサクラマスは、海に下る個体と、川に留まる個体がいます。
幼いころは皆、山女魚(ヤマメ)と呼ばれています。
それが、海に出て成長するとサクラマス、川に留まればそのままヤマメ。
実は両者は、幼少期になわばりや餌の取り合いで争った仲でした。
川には全てをまかなう資源はなく、生きる為には仕方なかったのです。
その時の争いに勝ったのはどちらでしょうか?
・・・そう、ヤマメなんです。
勝者であるヤマメはそのまま留まり、敗北して居場所を失くしたサクラマスの幼魚はやむなく川を下ります。
逆転劇
ところが海には、川よりも豊富な餌と大きく成長するチャンスがありました。
その分、捕食されるリスクも高いようですが、見返りは大きい。
1年もすれば、その大きさは、かつて負かされた相手をはるかに凌ぐまでに成長し、川に戻ってきた時にはメスを巡る争いにも圧倒的な差で、勝ちます。
何だか面白いですよね。
人生の逆転劇を見ているようです。
本当は海に出たくなかった!?
考えてみると、幼少期のなわばりや餌の争いで、負けた方が海を下り、勝った方が川に居続けたというのも、面白い話です。
勝つということは、発育の良い個体。
人間でいうと、ガキ対象で、ドラえもんの世界なら、ジャイアンです。
となると、負けたのび太君が海に出るわけですが、もしかすると、ヤマメとしてはできれば海に出たくないのかもしれません。
海に出るには危険がいっぱいだからです。
海に出ることしか考えていない鮭
鮭は、遺伝子レベルで海に出るメリットを知っている、サクラマスが進化した種だと考えられてます。
川に留まるより、リスクはあっても資源豊富な海に出て成長する事を全ての個体が選択します。
種全体としては、その方が種保存のため有利であると判断したのでしょう。
ちなみに、余談ですが同じヤマメでも九州のヤマメが海へ下らないのは、単純に暑いからだそうです。