寿司(すし)は健康なのか?その歴史から検証

寿司、といってもピンからキリまでありますし、突き詰めれば際限なく深められるほど深い料理です。その嗜好性はさておき、栄養面ではどのような効能があり、課題があるのか、その歴史を含めて調べてみました。

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海外では健康食としてブーム!?

海外の人が日本食として検索するナンバーワンは、寿司です。寿司は、健康的でバランスが良いと思われているようです。「ヘルシー」のイメージを抱いている人も国内外問わず多く、ミツカンのリサーチでは、海外では90%以上の人がヘルシーだと答えています。

寿司は健康に良いのか?

寿司は、マクロ栄養素(タンパク質、脂質、糖質)の比率がパーフェクトに近く、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素も豊富で、ほぼ完全栄養食といって差し支えないといわれています。

マクロ栄養素(多量栄養素)とは人の身体を動かすのに必要な主要栄養素、つまりたんぱく質、脂肪、炭水化物のこと。

これらはエネルギーあるいはカロリーとなり、基本的な身体機能をサポートするのに必要なものです。

そのバランスがパーフェクトに近いというのですから、驚きです。

生活習慣病予防

アジ、サバ、にしん、いわし、こはだなど、青背の魚は高度不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

有名な、DHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)が有名ですが、これらは体内で合成できません

食物から摂取する必要がある必須脂肪酸です。

DHA、EPAの健康的効能は広く知られおり、まとめると、下記のような効能があると言われています。

  • 血液がサラサラになる
  • 記憶力、集中力の維持
  • 目の健康維持
  • アレルギーの予防・改善
  • 中性脂肪の低下

DHA

DHAは脳に直接入って栄養素として機能できる数少ない成分だそうです。

脳や目の網膜の脂質成分であり、脳神経を再生し、情報伝達の維持に役立ちます。

ちなみに、DHAの含有量トップはサバです。

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EPA

EPAは脳内にほとんど存在せず、血液をサラサラにしたり、中性脂肪を低下させる効果があるとされています。

いずれも、血中のコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を防ぎ、心臓疾患や脳卒中、糖尿病、腎臓病などに有効なのです。

疲労回復

酢は、疲労回復に効果があるとされています。特に効果的なのは、糖と一緒に摂取すること。

体のエネルギー源・グリコーゲンを補給する糖は、酢によって補給効率が上がるんですね。酢飯は、味わい的にも糖と酢の掛け算で美味しくなりますが、栄養的にも抜群の相性だといえましょう。

美肌効果、ダイエットにも

マクロ管理ダイエット、というダイエット法があるようです。これは、先述のマクロ栄養素を管理するダイエット法で、理論的にも一定の効果が認められるといいます。詳細は、専門家にゆずりますが、マクロ栄養素のバランスに優れた寿司は、ネタにもよりますが美肌効果や、ダイエットにも効果的といえます。

美肌効果

魚介類は、高たんぱく、低カロリーなものが多いですね。白身魚はじめ、たこ、いかもそういう意味で良質です。

さらに、ヒラメやカレイのエンガワはコラーゲンも豊富。

ダイエット

タコはダイエットにお勧めのネタです。高タンパク質、低カロリーながら、よく噛むので満腹感もあります。

ビタミンEも豊富なので、アンチエイジング(老化防止)にも効果的です。

余談:カジュアルな登山食に最適!?

登山では、お弁当よりも、寿司の方がかさばらず、満腹感があり、なおかつ疲労回復効果もあって、胃もたれもしないので最適なのでは?と考えています。

課題は、腐らないこと。夏場の高温化でも安全に食べれる工夫が必要ですね。酢を強めにすれば回避できますが、あまり酢が強いと味わいの点でよくありません。また、山頂で食べ残した場合でも、持って帰るくらい日持ちを良くしておきたいところ。(※実は世界一登山客の多い高尾山近郊で、サバ寿司の移動販売の計画しています。)

寿司の歴史

寿司が日本に誕生したのは、1200年以上前。710~794年、現在の奈良市にある平城京に都が置かれた奈良時代にはすでにあったようです。川魚を塩と飯で漬け込み熟成させる「なれずし」がはじまりでした。

その元をたどれば東南アジアの山奥で、手に入りにくい魚を長期保存する手段として発達したもので、稲作文化と共に中国から伝わったとか。

平安時代における寿司

鮨は『今昔物語集』に登場します。

鮨売りの女が酔いつぶれて、売り物の鮨桶の中に嘔吐してしまったので、あわててかき混ぜてごまかした。

藤原朝成は肥満に悩み、医師に減量法を尋ねたところ、『夏は水漬け飯、冬は湯漬け飯を召しあがればよい』と教えられた。そこで鮎の鮨をおかずに湯漬け飯を食べたが、食べる量があまりにも多いので結局痩せなかった。

当時は嘔吐物と混ざっても気づかれない程、相当、臭かったと想像されます。鮒寿司で知られる乳酸発酵した、「なれずし」のようなものだったようです。

なれずしとは

魚を塩と飯で乳酸発酵させたのがなれずし。

数か月、場合によっては数年間、発酵させるという。

乳酸発酵により酸っぱくなり、phの低下により雑菌の繁殖を抑えつつタンパク質が分解され、それに伴いうま味となるアミノ酸が増加します。

のちに江戸時代になると酢が出回るようになり、酢飯を使用した寿司が主流になったようです。

江戸前寿司

江戸の郷土料理となった江戸前寿司。

東京湾には、新鮮で豊富な種類の魚介類が水揚げされました。

それらを酢飯にのせ食べさせたのが握りずしです。

北大路魯山人が書き残したところでは、寿司は立ち食いが主流で、座って食べる習慣はなかったのだとか。

さっとにぎって、さっと食べて、さっと帰る。

せっかちな江戸っ子らしい、日本のファストフードだったんですね。

なぜ、関西に寿司文化が伝わったのか?

関西に寿司文化が伝わったのは、1923年の関東大震災がきっかけです。

被災した職人が全国に移り住み、その土地に合った寿司文化が発達します。

めはりずし

関西南部、和歌山熊野地方や奈良県吉野郡の吉野周辺では高菜の浅漬けの葉でくるんだ「めはりずし」が有名です。すし、とつくものの、元はおにぎりのようなもので、農作業や山仕事のお弁当としてはじまりました。

なぜ「めはりずし」というかというと、「目を見張るほど旨い」からだそうです。

柿の葉寿司

奈良、和歌山、石川県の郷土料理として有名な柿の葉寿司。

和歌山紀州藩の漁師が近海で捕れたサバの塩漬けを大和(奈良)へ行商しにきたが、その頃には塩気が強すぎました。そこで、その塩気を和らげるために薄くそぎ切りにして飯と一緒に食べる方法を編み出したのが柿の葉寿司の始まりです。

殺菌効果のある柿の葉に包むことにより、保存に適するようになりました。また、柿の葉の香りが寿司に移り、風味も良くなります。

松前寿司

江戸時代から明治にかけて、北海道の海産物を京や大阪まで運んだ松前船には、朝廷に献上された昆布やにしんが積まれてました。

松前寿司は、サバの棒寿司を北前船で運ばれた北海道の昆布で巻いたものをいいます。

バッテラ

バッテラは何語か知ってますか?ポルトガル語で「小舟(bateira)」という意味なんですね。今ではサバの押寿司に白板昆布を重ねたものですが、元はコノシロ、という魚でした。コノシロを開くと尾の方は細いので、飯も片側を尖らせたその姿がボートに似ていたことからそう呼ばれるようになったようです。

笹巻寿し

押しすし笹の葉で巻いた寿司で、富山県のマス寿司が有名です。

保存性を重視した寿司の為、種、酢飯とも酢をかなり効かせて作ります。

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