先だって、縁あって知人の家で出張料理をしてきました。ご自宅に伺い、キッチンをお借りして、料理を提供したのです。
これは良い腕ならしになりました。今はレストランの現場からは離れた仕事をしているので、料理にじっくり向き合えるのは休日に限ります。その日は、ある程度、自宅で仕込みをしておいて、簡単なコース仕立てにしました。
お陰様で喜んで頂けて、私としても一人で考えて作っていては分からなかった課題が見えてきました。
独自の料理とは
レストランでは基本的にはコース料理のみの予約制を想定しています。そのため、多くのメニューを用意するより、限られたメニューをとことん美味しく、感動させるものへ昇華させていくのが大事だと思っています。
また、どのお店でも出しているような料理ではわざわざ来ていただく価値がないので、当店にしかない料理だけで構成するつもりです。もちろん、サービスや演出、器などの小道具も含めて。
ただ、それも言うは易し。実際にやるとなると大変です。その持ち球が今のままでは少なすぎる。もともと私は料理人からスタートしておらず、十代から料理をやってきた人と比べれば経験的に劣ります。知識も技術も積み重ねられた年月分の差は、簡単に埋められません。
でも、だからこそ、料理人、というだけでは作れない料理が作れます。
料理は人間の全感性をフル動員して楽しむもの。美味しい料理が作れるだけではレストランが持続しないのは、現実が証明しています。ご存知でしょうか、星付きのレストランでさえ赤字店舗は多いのです。よほどの革新的な変化がなければ潰れるのは時間の問題です。
私は、料理そのものよりも、美味しく味わえる環境や、思いもよらない演出やサービス、経験の方が、お客様にとって記憶に残ると考えています。
料理にまつわる課題
さて、出張料理を経て得た課題。
①持ち球の少なさ
②段取り、仕込みの効率化
③プレゼンテーション
④演出、小道具のテスト
⑤実務経験
細かく上げればきりがありませんが、主に以上5点です。
5つの課題
①持ち球の少なさは、創作レシピをデータ化して、週にひとつでも追加していきたいと思います。そして改善を重ね、これ以上改善のしようがないところまでいったら、一品として加えます。
②段取り、仕込みの効率化は、これは常日頃から意識することです。料理を創る場面だけではない。今の仕事でも常に考えなくてはならない。いくら感動できる料理が作れても、段取りが悪ければ、提供スピードが遅れて、お客様にご迷惑をおかけします。今回も、もっと提供スピードは早くできなければだめだと感じました。
③プレゼンテーション。たとえば、料理説明。普通にやっていては独自の料理を作ってもお客様には伝わらないでしょう。専門用語を並べるだけや、どこ産のなになにで、こだわりのある生産者が、、、というのも今は普通です。楽しませるぞ!というエンターテイメントの要素が必要だと思っています。
④演出、小道具のテスト。頭で考えているだけではわかりません。実際、やってみて、人の反応を見ないと。器もそろそろ作っていきたいところです。
⑤実務経験。①~④をテストする場、実務として経験できる機会を作ってこなければならないと感じました。出張料理のような機会は、チャンスなのです。例えばこれを月1回でもさせてもらえたら。否が応でも①~④が鍛えられます。
出張料理サービスを始めよう
さっそく、知人のつてをつたって、出張料理サービスを始めようと思います。それで稼ぐつもりはもちろん、ありません。
ようやく、自らの未来を自分で作っている実感が出てきました。私事ですが、いつの間にか受け身の人生になっていた気がします。縁や恩や感謝を大事にしてきたつもりですし、それに報いていくのが私の生き方ですが、ただ流れに身を任せていくのではなく、自ら舵を取って報いていきたいと最近は強く思うのです。レストランを開業するのも、自分の欲求や名誉、自己満足のためでは決してない。
先祖代々受け継がれた命と親に感謝し、次世代の未来の為に出来ることをしたい。子供たちの世代も、その次の世代にも受け継いでいけるように。
言葉にすると陳腐になりますが、この世に生まれて良かった、感謝!と思わず手を合わせたくなるような命の連鎖を作っていきたいんですね。