山頂で食べるおにぎりは絶品ですよね。
幼少のころ、家族で高尾山に登り、山頂で食べた赤しそのおにぎりの美味しさは今も忘れません。
食を通して、人類の持続・発展・成長に貢献することが経営理念なのですが、その高尾山頂で食べたおにぎりが原体験となっています。
レストランや料理は、単体で世界を変えたり、人類に貢献することは出来ません。
でも、食を通して、心が癒されたり、感動して明日への活力が生まれたり、回りまわって、出会ったこともない誰かの人生を変えることが出来ると信じています。
Mr.Childrenの『彩り』という曲をご存知ですか?
なんてことのない作業が この世界を回りまわって
どこの誰かも知らない人の笑い声を作ってゆく
「働く」ということは、そういうことだと思うのです。
人生を変える食体験
一皿の料理で、ほんの少し人生が変わった。
人生のうちで何度か、そうした経験をしています。
何年たっても、忘れえぬ料理。
大阪のミシュラン1つ星のレストランで食べた、アミューズの新鮮な驚き、わくわく感は今でも覚えてます。
その料理はシンプルでした。
カマンベールチーズをシュー生地で包んだ、ひと口サイズのアミューズ。
アミューズは「楽しませること」といった意味があり、フランス料理のコースでは、前菜の前のちょっとした料理です。
いちばん初めに供される料理なので、そのレストランの世界観にいざなう大事な役割があります。
なぜ忘れられないのか?
チーズをシュー生地で包んだアミューズ自体は、珍しくありません。
シャンパンに合わせやすいので、似たようなアミューズを供するレストランは多くあるでしょう。
ありがち、といっても良い。
それなのに忘れることが出来ないのは、サービスマンの説明が素晴らしかったからです。
「こちらは中が熱くなっておりますのでお気を付けくださいね。
ただ、冷めないうちに召し上がっていただきたいんです。
シューの中にとろとろのチーズと、アクセントに数種のスパイスと柑橘の香りが包まれています。
少し熱いかもしれませんが、口に含んでいただくとそれの香りの爆弾が爆発しますので、お楽しみください。」
文章にするとたいした感動はないのですが、これから訪れる体験がどんなに素晴らしいのか身振り手振り説明する様は、ほんとうにワクワクさせてくれました。
その期待感はまるで、ディズニーランドのアトラクションに乗る前のような心持だったのを覚えています。
食を通して誰かの人生に貢献する
大阪のレストランで経験した、あるひとつの食体験。
それは、レストランサービスがどうあるべきかということを、思い出させてくれます。
サービスには料理のように形がありません。
味もなければ、香りもない。
ただ、料理よりもはっきりと、記憶に残すことができる。
食を通して、誰かの人生に貢献するのは何も、食そのものに限りません。
食を提供する環境、仕組みによって、それは演出できる。
ただのおにぎりが、高尾山の山頂で食べた時に最高に美味しかったのは、2時間かけて登り切った達成感や、壮観な景色、きれいな空気、家族での幸せな思い出の中にあったからでもあるでしょう。