100年続くレストランの理念やコンセプト(2017年)

まったくの白紙状態から、100年続くレストラン作りの理念やコンセプトを2017年1月~構築しています。見る人からすれば、相当に拙くて、未熟であると思いますが、忘備録として、残しておきました。

目次

レストラン開業がGOALじゃない

目的はその先、100年続くこと・・・

「兵は国の大事なり、生死の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」

孫子の兵法の第一文です。戦は国家にとって重大事だ。人の生死に関わり、国家の存亡が決まる。だからよくよく考えないといけない。

レストランは私にとって「城」です。攻め込まれてすぐに落ちるような城なら創らない方がマシ。いま、多額の借金を抱えながら築城しようとしている。これは私にとって、末代まで平安の世を創る戦なんです。

やる前に勝つ!

このサイトを立ち上げたのも、そうした考えがあったからでした。孫子の別の一文に「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」とあります。勝つ人は戦う前に勝つ算段がたってから挑むが、負ける人は戦いが始まってから勝とうとする。

私は32歳くらいまで、後者でした。何事も事が起こってから全力を尽くすので、たとえ勝っても損害が大きかったり、大きなチャンスを逃していたりする。借金が積もり積もってしまったのもきっと、そのせいですね。

でも、これからは違う。生き方を変えます。

そのためにまず、習慣を変える。同じように朝起きて、同じように眠っていたら、何も変わらない。特に私は、自分でもつくづく思うのですが、俺って怠け者だな・・・と自覚してますから、まず怠けないための方法を考えます。

ルールを作る

私はまじめなので、ルールができちゃうと、従わないと悪いことした気になります(笑)守れないものは最初から無視しますが。ただ、自分で決めて、手帳に記したルールは守らないとすべてが崩れてしまう気がして、守らざるをえなくなります。

2017年に決めたルールのひとつは、毎日この奮闘記を更新する。です。

それだけで早起きになりましたし、仕事をこなしながら、考える習慣ができてきました。

レストラン開業にかける価値

飽和状態の飲食店。本当にやる価値があるのか。。。絶えず、問い続けないといけないと思います。

100年続くレストランを創る。

ということは、100年、お客様に支持され続けなければ続かないということ。飲食店の廃業率は半端じゃありません。

3年以内に7割が潰れます。10年続くお店はなんと1割といいます。全国の飲食店の件数はご存知ですか?

67万件です。コンビニが5万5千件ですから、12倍も飲食店の方が多いわけです。日本の2016年度の世帯数は約4906万。それを単純に飲食店の件数で割ると、73世帯になります。1店舗当たり73世帯という計算になるのですが、私はこの統計を調べてみて、頭を抱えてしまいました。

1世帯あたり平均2.4人として、175人です。たとえば175人のお客さまが月2回、来てくださったとしても350人。月間22日営業なら、1日の来店数は16人・・・

市場はレッド・オーシャン!?

まさに、熾烈な競争が見込まれます。もちろん国内のお客様だけではないとしても、限られたパイを奪い合うことに変わりない。それをする価値が本当にあるのか?と思ったのです。

結論は、もちろん「わからない」です。

まだ、材料がありません。ただ、100年続くレストランにしようと思った時、やってはいけないことは強烈に意識します。それは、いうまでもなく、お客様を裏切らないこと。私が昔、通っていたバーで教わったことがあります。

世の中には絶対に期待を裏切っちゃいけない職業が2つある。それは医者と、バーテンダーなんだと。

気障だけど、ちょっとシビれましたね。

心の奥底にある動機

なぜレストランをするのか?つきつめていくと、なぜ、生きるのかと問うことと同じだと気付きました。

長く、他者への貢献こそが自分自身を突き動かす最大の動機だと思っていました。仕事を通して、お客様を喜ばせたい、社会に還元して周囲を幸福にしたい。。。当然、その意識は強いのですが、ふっと、もっと俗っぽいところに自分の本当の思いはあるんじゃないか、、、と立ち止まりました。

親に旅行のひとつでもプレゼントしたり、お世話になった人に恩を返したり、若い頃支えてくれた人に感謝を表したり、子どもたちの未来の為に投資したり。成功した暁には、、、と思い浮かべるのは、そんな身近な人たちの笑顔でした。

20代の頃は、松下幸之助さんや稲森和夫さんの高尚な本を読み漁って、日本国の為、社会の為、利他の心、など意識的に考えていました。でもどうやらその器にはいま、全然ないようで(笑)なんのために生きるのか、どんな使命があってやるのか、それがわかっているのとそうでないのとでは、仕事の質が変わってきます。まだ成功してないので説得力がないですが。

強い思いは現実化する、ということを証明させたいと思います。

レストランの始まりと終わり

もしかしたら「レストラン」というのは形だけで内実はとっくに終わっていたのかもしれない。。。

マリー・アントワネットをご存知の方は多いでしょう。18世紀のフランス王妃です。彼女は貧困でパンも食べられないという庶民の話を聞いてこう言ったと伝わります。

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?」

マリー・アントワネット

俺たちから税金をふんだくって自分たちだけ良い思いをするなんて許せない!ということで起こったのがフランス革命でしたが、それによってお城お抱えの料理人たちはパリの街で飲食店を開業します。それが「レストラン」のはじまり。

ごく限られた人だけが楽しむことのできた料理が、一般の人たちに広まったんですね。

でも今や、、、「レストランの料理」も珍しくなくなってきています。新しい技術や素材も、すぐにコピーされるものが多い。だから情報をブラックボックス化するお店も多いですが、これだけITが発達するとSNSであっという間に拡散されます。「レストラン」はその箱の中だけで発達してきた文化。これからの時代においては、新しいあり方が求められると思います。

構想レストランは、美味しい料理を提供するお店であることはもちろんですが、それ以上に、食と人生の総合エンターテイメントとしての価値と持続的な人のつながりを大事にしたお店にしたいと思います。

100年続くために何を中核にするか?

最も慎重に考えているのは、100年レストランを持続させるために何を中核とするか。

時代は変わる。

特にこの2020年の東京オリンピックを境に価値が大きく変化すると思っています。理由は、縮小社会でありながらオリンピックによる好景気に沸き、そして一気にその反動が起こるからです。

私はまず、その時に自身の経済を成り立たせないとならない。

それには今後、社会がどう変わるか読まないと、やってはいけないことをやってしまう可能性がある。正直なところ私にはまだ「100年レストランを持続させるために何を中核とするか」確信が持てないでいます。

料理の巧拙やサービスの良しあし、お店の雰囲気、そういったことよりも「何を売って経済を成り立たせるか」ということがまず大事だと思うのです。だからしっかり考えていく。

メニュー構成や、サービスの在り方以上に時間を割いていきます。

どう変わっていくのか?

先だって、日本の人口と飲食店数から、1店舗あたりの顧客数を計算してみました。

そこでは日本の総人口1憶2700万人で、世帯数が4906万、1日の来店顧客数は1店舗あたり16人くらいになる計算でした。これが13年後の2030年になると総人口が約1憶1600万人。

世帯数は約4500万世帯。

飲食店の数は今でこそ年々増加傾向ですが、オリンピックを境に激減するでしょうから、1店舗あたりの来店顧客数はそう変わらないかもしれません。しかし65歳以上の人口は2016年の26%から2030年には31.6%まであがります。

問題はここです。

その頃には70歳位まで労働人口として数えられるかもしれませんし、IOTやAIなどの技術革新で、労働のあり方も大きく変わっているかもしれません。ただ、「外食に対する消費者意識」という面白いデータがあって、60歳以上になると、ほとんど外食しない、もしくは半年に1~3回という人が36%以上を占めるのです。

2030年、仮に、65歳以上のうち36%の人が外食をしないと計算し、実際に外食する人はどれくらいいるのか?

計算してみます。

外食する人の想定人数

●生産年齢人口(15~64歳)・・・・6,773万人

●65歳以上・・・・3,684万人(そのうち、外食する人 は74%の2,358万人)

●外食する人・・・・9,131万人

2016年飲食店数67万件から、人口減少分減ったとすると、60万件。飲食店1店舗あたり外食する人の人数は、152人になります。楽観的に見積もったとしても、152人の人が月間2回来てくれて、20日営業なら、1日15人の来店数という計算です。

ゾッとしますね。

生産年齢人口が好転するのは2095年!?

総人口と生産年齢人口(15~65歳)がどんどん減り、65歳以上の高齢者が増えていく高齢化人口縮小傾向は残念ながら、2095年くらいまで好転することはありません。これは占いでも推測でもなく、確定した未来です。

100年続くためには当たり前ですが、そうした未来を乗り越えていかねばなりません。

だから、ひとつレストランで決めていることは、レストランと言えど「レストランという箱の中だけで勝負しないこと」です。あるいは、勝負する必要がないこと。

今のところ、レストランの席数は多くても20席くらいかなと考えています。手がけたいのは通販と、テイクアウト。

そのすべてを満たせるものと考えていくと、、、それが今のところ、私の大好きな【ピッツァ】かな~と思ってるんです。

レストランとアウトドアの融合!?

グランピング(グラマラス・キャンピング)が近年、ブームになっています。簡潔に言うと、グランピングとは「ホテルの快適さ×キャンプ」。この市場は、ますます大きくなってくると思います。理由は、人の移動手段がより自由に、楽に、コストもかからなくなってくるから。

車の自動運転化の技術は日に日に進歩発展しています。寝てる間に目的に着いてしまう、という未来もそう遠くないでしょう。

また、つい先だってのニュースで、日産が電気自動車の充電を月額2000円のサポートサービスを始めたと、ありました。極端な話、1か月で日本一周しよう、という計画を立てたとしても、燃料代は2000円。ガソリンならいくらかかるでしょう?日本一周をおよそ12,000kmとすると、私の四駆で1?あたり平均14km走行ですから、857?。ガソリンが120円としても10万円以上かかる計算です。

もし代替エネルギーが開発されたら、燃料代はゼロになる日もくるかもしれませんね。

そうやって考えていくと、気分転換に今度の週末はグランピングに。なんて人は多くなりそうです。従来のキャンプとなると、テントをはったり、火を起こしたり、それをまた片づけたり、何かと面倒な場面も多いですが、グランピングならばトイレもシャワールームも、ベッドもソファもついていたりするので非常に快適です。

また、燃料費がかからなくなれば旅行先での支出も多少、増えるでしょう。

レストランの価値はどう変わる?

これからのレストランは郊外こそチャンス!と考えています。人の移動手段がより自由に、楽に、コストもかからなくなるなら、ちょっと足をのばして遠くに食事に行こうという人も増えるはず。都会のせせこましい建物に押し込められて食べるより、開放的な自然空間で楽しみたい!と。

食の業界では、ミシュランの三つ星レストランが最高峰だと考えられがちですが、その価値はきっと壊れるか、今より、重要視されなくなると思います。そもそもミシュランのコンセプトは「わざわざ足を運ぶ価値のあるレストラン」です。移動手段がより自由になるなら、地方はかえって脚光を浴びやすくなる。もしかしたら三ツ星レストランは、地方に増えるかもしれません。

レストランとアウトドアを融合させる!

人が「美味しい」と感じるにはどんな段階があるのかと考えたことがあります。

人は日常的に食を楽しめるようになると、時には非日常空間で楽しみたいと思う。それを満たすのがレストランの役割のひとつです。これまでも幾度か書いたようにいまひとつ、レストランはその役割を果たせていないばかりか、新たな提案が出来ていないと思っています。

私は、三ツ星レストランを創るつもりはありません。お客様にとって人生で最も美味しかった記憶を創りたい。

それでできたイメージコンセプトのひとつが「レストラン×アウトドア」。

レストランの洗練された料理と上質な会話、アウトドアの自然を感じる空間とアクティブな演出。バーベキューのような楽しい時間と、ちらちらと燃える炎を見つめる癒しのひと時。。。

100年錆びない空間づくり

可能性と夢をとことん詰め込んで・・・

構想レストランでは、レストランとテイクアウト、通販、大きく分けて3つの販路を持ちたいと思っています。レストランでは徹底して、「人生最大の美味しい記憶を創る」ことに集中します。

イメージコンセプトが「レストラン×アウトドア」なら……

まだ出店する立地は決まってませんが空間イメージはありまして、敷地のうち半分がログハウス、もう半分は庭にします。大自然の中になくても、庭の中にこころ休まる自然な景観を作ります。できれば川の側にあればいいと思っています。小川でもいい。私は「水」との縁が深く、これまで暮らしてきた住居は例外なく、川の側でした。遠くで水の流れる音は気持ちが安らぎます。

理想のフロア

イメージコンセプトから、レストランはログハウス調の建物にしようと考えています。

大きく分けて4つの空間を作ります。

メインフロアはカウンター席。カルツォーネを焼く石窯と厨房を、半ば囲むようにカウンター席を設けます。いわゆるオープンキッチンですね。席数は8席。ゆったりと座れるように間隔は広めでとります。

それと、6帖、10帖、12帖の空間。すべて個室です。6帖と10帖の部屋はできればつながるように設計します。もしくは、2階席を設けても良い。

カウンター席の役割

メインフロアのカウンターは、ライブ空間です。カルツォーネを焼いたり、料理したりする演出。席に座ると、外の景色が見えるように窓は幅広く取ります。

ただ、ひとつのコースを楽しんでもらうとき、最初から最後まで、カウンターにはお座りいただきません。お座りいただくのは、カルツォーネを召し上がっていただくとき。その他の食事はほぼ、個室で楽しんでいただきます。

カウンターの向こう側には、ピザ窯。カルツォーネを目の前で焼いたり、魚をおろしたり、はたまたシェイカーをふったり、ワインサービスしたり、お客様に魅せる場です。ライブ感を持たせたいのです。

私はレストラン経験の中で長く、カウンターの中に立って仕事をしていました。その経験もあり、カウンター越しのサービスが好きなんですね。カウンターに立ち始めて間もない時、カウンターは俳優にとっての舞台だと思いなさいと教わりました。お客さんは観客。そう思うと、動きも、考え方もまるで変わります。見られている、という意識が強く働く。その緊張感がたまらなく好きなんだと思います。

また、独自性という意味でも、重要な場所です。

カウンターという場所は、一朝一夕に務まる場所ではありません。何が問われるかといえば、人間そのものが持つ魅力。カウンターに立つ者の人間的魅力で、お客様をひきつけるのです。

個室にする理由

大きさの違う3つの個室は、それぞれのニーズを明確にします。

6帖の空間は、恋人や夫婦などカップル用です。10帖は1世帯のファミリー用。12帖は2世帯のファミリー、もしくは会議などの商用、小パーティー用。6帖と10帖をつなげるときは、ウェディングや大パーティーに利用してもらいます。

個室にするのは理由があります。見せるものと見せないものを明確に分けて、演出するため。それと、料理やシチュエーションによって、お客様ご自身に移動してもらうためです。

魅せる演出と見せない演出

見せるものと見せないものを明確に分けるとはどういうことかというと、たとえば、カルツォーネを焼くパフォーマンスは魅せる演出です。でも、バースデーなどの記念日で、豪華に盛り付けたケーキは、実際にお客様の前に提供するまで見せない演出です。

「人生最大の美味しい記憶を創る」には、単に美味しい料理を提供するだけではかなわない。以前も書きましたが、それでは200年以上前のレストランから進歩発展していない。演出は絶対に欠かせません。

この空間を活用した演出づくりには、未来をしっかり見据えて、様々な可能性を考えながら詰めていきます。

移動する必然性

それぞれの部屋からは、自由に庭へ出れるようにもしておきます。イメージコンセプトは「レストラン×アウトドア」ですから、たとえばメイン料理となる肉や魚を焼くときは、庭に出ていただいて、豪快に焼いてもらうのも手です。

外で食べる肉は、最高に「旨い!」ですよね。そう感じるのは、やはり環境+α。私が狙っている効果はマズローの欲求5段階説でいうと「自己実現」です。絶対に美味しく焼ける環境は、こちらで用意しますが、焼くのはお客様自身。

人は受け身で体験したことより、主体的に行動したことの方が記憶に残ることが脳科学でわかっています。「行動」は脳に「記憶を想起させる」という法則をもつそうです。たとえば自分で焼いた肉が、びっくりするほど美味しかったら!?普通に提供されてものすごく美味しかった肉料理より、記憶に残りませんか?

カルツォーネを食べる時にはわざわざ席を移動していただいて、カルツォイオーラ(「カルツォーネを焼く人」という意味の私の造語)のパフォーマンスを楽しむのも、同じ理由です。

移動する必然性はそこにあります。

庭をどんな風にするか

レストランの外には出来るだけ広い野外空間を作ります。

設置したいのは、溶岩バーベキューを最大10人くらいで出来るようなスペースと、店内に置く石窯とは別にもう一台、石窯。背もたれのゆったりした質の良いデッキチェア。それから6-8人用のテントが張れるくらいのスペース。

さらにあれば、2畳ほどのハーブや野菜を育てる畑。薪を割る場所。ハンモック。小さな小川があれば最高です。。。こういうのは理想から組み立てた方が良いというので、欲張りにいってます(笑)

でも本当に、100年持続するレストランを創るのですから、先々のことを考えて、キャンプやグランピングとして利用できるようにしたり、ウェディングパーティーやプチ披露宴が出来たり、はたまた企業のリクリエーションや、学校の野外学習、オーベルジュ、レンタルスペースなど、様々な可能性を考えておくに越したことはありません。

THEアウトドア

イメージコンセプトである「レストラン×アウトドア」。庭はTHEアウトドアです。大事な要素を担っています。そもそもアウトドアとはHICOにおいてどんな意味を持つのか?

キーワードは、アクティブ、癒し、そして感動。

食にアクティブさはいらないという人がいるかもしれませんが、それは明日になれば忘れてしまうような印象の薄い食には必要ないでしょう。ただ、ミッションとして掲げている「人生最高の美味しい記憶を」という姿勢で創っているレストランでは不可欠です。なぜなら、レストランという箱の中だけではそれは完結しえないから。

レストランというのはほぼ、受け身です。お客様ご自身が参加しなくても、料理を注文すれば至れり尽くせりのサービスを受けられる。でも、それではもう、進歩発展がない。つまらない。

ちょっとしたことで良いのです。お客様ご自身が参加したくなるような仕掛けをどれだけ用意できるか。薪が割れたり、野菜を収穫出来たり、火を起こせたり、肉を焼けたり、石窯体験出来たり、ハンモックで揺られたり、・・・。

そんなアクティブな空間で味わうと、料理はますます美味しく感じられ、記憶に残ります。バーベキューの思い出が色あせないのはこのアクティブさが影響していると思うのです。

癒しと感動

そして揺らぐ火を見つめたり、ゆったりとしたデッキチェアに座り、空を眺め、風を感じ、良い空気を吸いながら食べる料理は格別に美味しくなります。人が美味しいく感じるためには、心穏やかにリラックスした状態がベストなのです。他のことに気を取られていると、料理の味はぼやけてしまう。

木々の緑や、せせらぎの音、ゆらめく炎はそれだけでヒーリング効果があるそうです。

料理、サービス、演出、空間、ストーリー、すべてが相乗的に互いを高め合ってお客様のこころに届いた時に「美味しい」を超えた感動が生まれると思っています。それこそ、私の目指す「人生最高の美味しい記憶」です

溶岩焼きバーベキュー

2023年の春、構想レストランを訪れたカップルの話(未来予想図Ⅱ)を妄想してみました。

そうしているうちに、元々なかった発想まで浮かんできました。

溶岩焼もそのひとつです。当初は炭火焼きでいきたいと考えていました。暗闇の中で炭火が赤く燃えている様は視覚的に良いと思ったからです。でも溶岩焼にしても火は起こすわけですから、たいして違いはありません。

むしろ、利点の方が多いことに気付きました。

何より、旨い。ピッツァも、ガスオーブンで焼くより、石窯で焼いた方が美味しいのは、超高温の遠赤外線で焼くからです。表面はこんがり、中はふっくらと火が入る。だから石窯で焼いたピッツァは石窯ならではの食感になります。

それから、ヘルシーであること。肉を焼いた時、余分な脂を石が吸収してくれるという。また鉄板で焼くと肉自体が持つ水分が肉自体にまとわりつきますが、それもない。だから肉の味わいが凝縮して感じられます。

また、網や鉄板で焼くより掃除も楽です。必要以上に匂いをばらまかないし、煙も少ない。溶岩プレートは室内に持ち込んで焼くこともできますから、雨の日や風の強い日、寒すぎる日にも準備が楽です。

いいことづくめです。

火を見つめながら焼くのが一番!

何といっても、肉は野外で豪快に焼くのがいちばん旨いと思っています。穏やかに揺らめく火を見ていると、脳をリラックスさせるホルモンが出るという。人類共通のDNAレベルでの記憶がまだ私たちにも残されていると聞きますが「ご馳走にありつけるぞ!」という原始時代の記憶がよみがえるのかもしれません。

以前、マズローの5段階欲求から美味しさを感じる段階を考えましたが、その理論から言っても、主体的に肉を焼いて食べるというのは、5段階でいうところの最高レベル「自己実現」になる。

経験的にいってもそうですね。三ツ星レストランで食べた、7時間かけて仕上げるという低温調理の肉料理よりも、キャンプに行って、焼いた肉の方が美味しかった。何より、楽しかった思い出と同時に、記憶に強く残ります。

Tボーンステーキ!

Tボーンステーキをご存知でしょうか?フィレとサーロイン、2つの部位がついた骨付き肉です。これを溶岩焼にしたいと思います。毎日はいりませんが、時々、無性に食べたくなる。一度、体験したら頭にこびりついて離れなくなると思います。熱々の溶岩プレートに置いた瞬間の音、香。かぶりついた時の幸福感。

特に夏の夜、ゆらめく火を見つめながら、空を見上げれば星空、片手にワイン、座り心地の良いデッキチェアに座って、かぶりついたら最高だと思います。どんなに時代が変わろうとも「旨い!」と感じるでしょう。

イタリアのトスカーナ地方に「Bistecca alla Fiorentina」(フィレンツェ風ステーキ)という、このTボーンステーキを豪快に焼いた郷土料理がありますが、イメージはそれです。合わせるワインは400年も前からトスカーナの赤ワインと決まってる。サンジョベーゼというイタリアを代表するブドウ品種から作られるのですが、代表的なのがChianti Classico(キァンティ・クラッシコ)。

単純な料理ですが、環境をばっちり整えて、そこに至るまでの流れをきちんと作れたら、人生最高の美味しい記憶になると確信しています。

デザートについて役割を考えたうえで、力配分を決める

食事の終わりを締めくくるデザートは、料理構成において、大事です。ないがしろにできません。

特に女性の方は、デザートに重きを置く方が多いでしょう。盛り付けも、料理に比べると、華やかに、可愛らしく、遊ぶことができます。しかし、主役は、デザートよりも、料理になるでしょう。役割としては脇役です。

全く力を入れないわけではありません。いま考えているのは、たとえばティラミスを工夫して、他にはない、最高に美味しいティラミスに仕上げて、それこそ「忘れられない味」まで持ってくるか。

もしくは、石窯で焼くデザートをもっと開発するか。イタリアには日本で知られていない様々な郷土デザートがありますが、石窯で焼けば面白そうなものがあります。デザートピザも作れます。

他にも方法があります。デザートはどうしても、手間がかかります。同じ手間をかけるなら、やはり、料理の方に重きを置きたい。それなら、外注した方がいいかもしれない。下手に、慣れない者が四苦八苦して作るより、デザート一本で勝負する人、パティシエがいるのですから、まかせた方が良いですよね。

その場合、デザート自体に独自性がなくなるので、皿や盛り付けや演出を工夫する必要があります。

善く戦う者は人を致して人に致されず

だんだんと、レストランの存在意義が明確になってきました。

目的は、【100年持続するレストランを開業すること】ミッションは、【お客様にとって人生最高の美味しい記憶を創ること】

これから考えていく、戦略、戦術は、すべて有機的に連鎖しなければならない。もし核メニューをカルツォーネから魚料理専門に変えたとしても、目的もミッションも変わりません。

いずれにせよ決めておかなくてはならない、大事な戦略があります。

先手が打てる仕組みづくり

どうやってそのミッションを果たすか?<戦略>について思いを巡らすとき、孫子の言葉に必ずヒントはあります。

「善く戦う者は人を致して人に致されず」

戦上手は、相手に主導権を取らせないということです。

構想レストランでも、お客様に合わせて柔軟に対応するのも大事ですが、確実にミッションを果たすには、思い通りに事を進められるよう仕組みづくりをするべきだと思います。なぜなら、空間づくりや、演出、料理提供、どれをとっても、「お客様にとって人生最高の美味しい記憶」のひとつになる。そのためにとことん集中しなくてはならりません。

それには、お客様が誰とどんな目的で来てくれるのか、先に知っておきたいのです。

食材の好き嫌いはもちろんのこと、お連れ様の情報、子どもさんがいるなら何歳なのか、女の子か男の子か。情報は多ければ多い程、良い。予約の段階でどこまで聞くかは、追々決めていきますが、孫子の言葉にもある「彼を知り己を知れば百戦してあやうからず」。お客様のことは事前に知っていれば知っているほど、ミッションは果たしやすくなります。

完全予約制レストラン

結論。構想レストランは完全予約制の完全プライベートが良いかと考えています。

今の構想では1日多くて3組限定です。料理はコースのみ。完全予約制にするのは、あらかじめ準備でき、ミッションを果たすためにとことん集中できるからですが、他にも理由があります。

まず第一に、日本の未来はどんどん縮小していく社会です。少子高齢化社会は確定した未来ですから、それに基づいて設計しなければ、100年なんて到底もちません。先だっても見たように、人口からして飲食店の数が多すぎです。

限られたパイを奪い合う、レッド・オーシャン市場です。

だから、大人数をどんどん収容してこなしていくのではなく、小人数をとことん接待して喜んでもらって、常連様を作っていく方が未来を考えても良いと思ったのでした。それに前者だと、顧客のニーズ、労働生産性を考えて、今後はロボットに労働市場を奪われる可能性があります。量より質です。

これまでにない市場を開拓!

もうひとつ、完全予約制にする理由があります。

市場での過当競争は極力避けなくてはなりません。そのためにレストラン以外の販路を設けるのと同時に、レストランとしても敵の多くない市場を狙うことにしました。

イメージコンセプトである、レストラン×アウトドアです。ただのレストランではなく、アウトドアの要素を入れる事でこれまでにない市場を開拓する狙いです。だから三ツ星レストランも高級レストランも厳密にいえば、敵ではない。

むしろ、グランピング施設など、レジャー関連の方が敵かもしれない。ただ、そうはいっても、お客様視点で見ると、食事に行く時の選択肢のひとつにすぎません。デートするなら、都内の洒落たレストランか、郊外のユニークなレストランかどっちがいい?・・・

という感じでしょう。

料理は究極のアート

アーティストが表現するのは、人の目に見えないもの、形にならないもの、聞こえそうで聞こえないものだと思います。世界のどこかの誰かが感じていたり、無意識に欲しがっていたものがアーティストの手によって、目に見え、聞こえ、触れることができるようになる。それがアートではないか。

料理も似たようなところがあります。皿の上に、季節あり、色彩あり、香りも豊かで食べれば人の命に変わる。音楽も絵画も文学も、心は満たせるかもしれませんが、心身ともに満ち足りた気持ちにさせる料理はもしかすると、究極のアートかもしれません。

コース料理はオーケストラ

コース料理にしたてる場合、気にしなくてはならないのは、構成です。音楽でいうとオーケストラですから、リズム、テンポ、強弱などバランスを考えないといけない。もちろん音楽のようにコース料理にも型はあります。料理はその国、土地、地域で連綿と繋いできた文化ですから。フランス料理のコースでいきなり、牛ほほ肉の赤ワイン煮込みは出てこない。最初は口当たり良く、胃にやさしく、食欲を刺激するような、料理が出てくるのが普通です。

さて、レストランのコースは主役が決まっています。カルツォーネと溶岩焼。オーケストラでいうと、第一楽章の一番の盛り上がりがカルツォーネ、第二楽章が溶岩焼です。この2つを軸に構成していきます。

季節ごとにテーマを決める

春夏秋冬でコースを変えますが、毎回、テーマを決めようと思います。テーマは、その時々において、捉われず、縛られず、発信したいこと、表現したいこと、求められていることをじっくり考えて決めます。

実は開業してすぐのテーマはもう決めているのです。「感謝」。これ以外にありません。

そして、お客様には驚くほどきれいに装丁したメニューをお渡ししたいと思っています。コース料理だとお客様に選んで頂くメニューは必要ないのですが、写真や文章を駆使して、お客様が持って帰りたい!というくらいのメニューブックを作ります。

構想レストランのコンセプト

USJをV字回復させた森岡剛氏が就任して、掲げたコンセプトは「世界最高を、お届けしたい」。

それまで、ハリウッド映画ファンを対象にしたテーマパークだったものを、ファミリー層や、海外からのお客さんも取り込むために、世界最高のブランドを集めたエンターテイメント・セレクトショップにしようと変えたのでした。

私がレストランを開業する目的は、一生、記憶に残るほどの美味しい記憶を創って差し上げたいから。自分が培ってきたスキルや知識を活かして、人を幸せにしたり、人生を豊かにすることができれば、それに勝る喜びはありません。そして、それ以上に、自分が打ち込めることはないと最近は確信を持つようになりました。

せっかく開業するなら、自分の代だけで終わるようなものではなく、100年持続できるレストランにしたいと強く思っています。だからこそ、戦略を考え、OPEN前からサイトを立ち上げ、どうすれば100年持続するレストランが作れるか、考えることにしました。

人生最良の美味しい記憶を、お作りしたい

少しずつ、余計なものがそぎ落とされ、大事な部分だけが際立って心に残り、外部のアンテナにも引っかかるようになってきました。森岡毅氏の著書を読み、USJ再建のために掲げたコンセプトを知って、深く共感したのです。

「世界最高を、お届けしたい」を、自らの構想レストランに転用すると……

人生最良の美味しい記憶を、お作りしたい

パクリでしょうか(笑)いや、これは森岡氏の言葉を借りれば、「リアプライ」です。

モデルは人生至上、最高のレストラン

投資と思って、これまで様々なレストランへ行きました。

星付きレストランも、知人のすすめるレストランも、自分の足で見つけてきたレストランも、様々ですが、最も記憶に残り、世界最高のレストランだと思うのは、かつて私自身が勤めていたレストランです。

30年続いたレストラン

そこは、関西の、静かで、品の良い住宅街にありました。大通りからは外れていて、目立った看板もないのですが、お客様は多かった。何度も足を運んでくれる方がたくさんいました。

星付きレストランではありません。今はもう、閉店して存在しないのですが、30年、続いた歴史あるレストランでした。

重い扉を開けるとそこは異空間。重厚感のあるカウンター席で、床は大理石。天井には、本物の石がはめ込まれていました。昼間でもうす暗い空間ですが、窓から絶妙にはいってくる光量は日常から隠れるのに好都合です。

30年続いた、伝説のレストラン

細部まで考えられた演出

カウンター席は12人が横に並んで座れるロングカウンターです。

夜。日も沈み、抑えられた照明の店内。椅子に腰を掛け、足を組んで、肘をカウンターに乗せて、ワイングラスを傾けていると、時間は永遠にも、一瞬にも感じられました。その椅子は、何時間座っていても疲れません。テーブルの高さと椅子の高さと、腰を掛ける幅が絶妙に設計されているのです。

スポットの照明はすべて間接照明。自分の顔に直接あたることはない。

音楽は、ジョン・コルトレーンのJAZZが良く似合います。BOSEのスピーカーから、店内を包み込むように流れていく。目の前に広がる光景は、ワイン、ウィスキー、ブランデー、リキュールなど幾種類もの酒が並び、重厚感がある。

この、心地よい緊張感と、落ち着いた安らぎ。哲学レベルでこうした空間を演出できるお店に私は出会ったことがありません。

お店は生き物

作ったのは私ではありません。私はここで、9年働き、最後の3年ほどは店長を任されていました。

これまでの人生において、もっとも濃密な時間だったかもしれません。いま、存在しないのは本当にさびしい限りです。私はこのカウンターの内側に立って、仕事をするのが好きでした。誇らしかった。ワインを注ぎ、お客様と会話し、時に目の前で料理して、提供したり。

当社のレストランはコンセプトが違いますが、個人的な思い入れを語れば、9年勤めていたこのレストランが、具体的な目標なのです。お店は生き物です。今はなきそのレストランの意志は、当社が引き継いでいきたいとさえ思います。

広告は一切出さない

入口はひとつではありません。飲食店にとって、ぐるなびや食べログなど、レストランのポータルサイトから集客するのは王道です。ですがその王道は、情報量が増え、多様化している今、効果は薄れてきていると思うのです。

例えば、大切な人の誕生日にどこか特別なところへ行くとする。サイトでも調べるでしょうし、友人に聞くかもしれません。食べログやぐるなびももちろん、チェックします。でもその中で、もっとも信ぴょう性が高く、実際の判断に大きく影響を及ぼすことは何でしょう?

私は人のネットワークだと思います。

独自のネットワーク

ネットワークは人と人とのつながりです。

新しいお店に行く場合、信頼のおける人から聞いた情報ほど、信用できる情報はありません。あの人がいいと言ってたから間違いない、と思って選択する。それが確かなら、さらに人から人へ伝わり、また新たな人を呼び込んでくる。いわゆる、口コミですね。持続型レストランの為にこれ以上の集客はないと思っています。

そう考えていくと、ネットワークがいかに大事かわかります。それも、人と人との結びつきが強い独自のネットワークほど、優位です。では、どうやって作っていくのか?

私は、デジタルと融合させながら、集めていきたいと思っているのです。

SNSの威力

ソーシャルネットワークサービスの中でも、facebookはご存知の方も多いと思いますが、この拡散力はすごいですよね。私の友だちが、そのまた友だちの投稿に「いいね」とすると、その記事は私の目にも触れるようになります。現実世界で過ごしていたら繋がらないような人とも、ポンとタップすると繋がる。

ピコ太郎が一瞬で世界に広まったように、魅力あるメッセージをSNSユーザーを通して発信する力や話題性があれば、見えないところで次々にネットワークは作られていくでしょう。ホームページはその終着駅となるはずです。

当面の目標は、このサイトへ多くのお客様を集めてくること。開業する2年前からホームページを立ち上げたのもそのためです。検索エンジンでも、できたばかりのサイトより、コンテンツが多く、記事が独創的であるサイトほど、上位に表示されるとうわさで聞きます。

必要なのは、対象としているお客様を呼び込むコンテンツ作り。これからますます、質の高い情報を求めて、人は検索してきます。様々な動機に対応して、入り口はいくつも用意しながら、行きつくところは、このホームページ。そんな風に組み立てていくつもりです。

レストランの人材育成について

1人でレストラン100年事業は運営できません。100年持続するためには、後継者やスタッフをどうやって育てていくか?ということが重大事です。

また、受けた「恩」を次世代に返し、「縁」を伝えていく、ということは個人のミッションとして大事にしたいと思っています。だから、やるからには、ここまで育てていただいている社会に対し雇用を創ったり人の夢を支援したり、スタッフの生活を成り立たせたりして、還元していきたい。

人を育てることは最も大事な恩返し

人材教育は言恩返し。私は、そう考えています。

ただ、労働のあり方はいま混沌としています。残業は社会悪になり、生産性を上げることなしに存続は難しくなってきます。まして飲食店は拘束時間が長く、レストランサービスひとつとっても覚えることはたくさんあり、就労時間だけで学ぶことは困難です。とてつもなく時間がかかる。

従来、レストランの仕事は「見て覚えろ」「家帰って勉強してこい」の世界です。

考えてみれば、当たり前です。お客様を実験台にするわけにいきません。でもそれでは、今の時代、人はきちんと育たない。効率もよくない。以前、ホリエモンこと堀江貴文さんの「寿司職人が何年も修行するのはバカ」発言がありましたが、その表現は別にして、その趣旨には同感です。

人材育成におけるスタッフの質の最低条件

でも、条件があります。基礎が備わっていること。見習いが最初、皿洗いから始めるのには理由があります。まず、レストランが守らなければならない絶対原則を知らなければなりません。

それは、衛生。食の安全です。

お客様の口に入れるものに対する意識がきちんと備わっているか?知識はあるか?が何よりも大事なのです。それをすっとばして、食材を触るなんてもっての他だと思います。当レストランがスタッフにまず求めるのは、そうした「基礎」を理解して行動できるかどうか。どんなに仕事が出来ても基礎を疎かにしては、事故が起こる可能性がある。

そうなってからでは遅いですよね。

仕込みよりも研修に時間を割き、人間教育を優先させる

お金を頂く以上、プロでなければならないと思います。アルバイトも社員も関係ありません。それはお店としても同じこと。

だからスタッフには誰が対応しても恥ずかしくないように、「すみません、新人なんで、、、」というみっともない言い訳をしないように、指導します。極端に言えば、手の込んだ料理の仕込みをするくらいなら、人材育成に時間を割いて、お客さんの期待を上回るべき。決して、料理の満足度を軽んじているわけではないのですが、「人」自体に感動してもらう方がずっと価値が高い、というのが当社の考えです。

IoTやAIのデジタル技術が進めば進むほど、そんなアナログな魅力が際立つと思っています。

ワインリストの役割

ワインリストはどのようにするか、自社ならではのラインナップや特徴を伝えるには?

考えていることがあります。子供たちがよく、アニメのカードをコレクションしてますが、あんな感じでファイリングするのです。ワインは、同名のワインでもぶどうの収穫年によって味わいや香も変わる飲み物ですし、多くの銘柄を扱おうと思えば、同じワインを何本もストックできません。

カード式にすれば、リストの変更は簡単です。また、リストから外すワインも、そのカードを取っておいて、仕入先、仕入れ価格、テイスティングコメントなど書いてファイリングしなおせば大事なデータになる。実はこれは、「バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?(林伸次氏著)」という著書からヒントを得てますので、お断りしておきます。

\楽天ポイント5倍セール!/
楽天市場

どんなワインを揃えるか?

多くのレストランでは、生産国からリストを組み立てています。フランス・ブルゴーニュ、イタリア・トスカーナ、ドイツ・ラインガウ、といったように。これでは、知識のある人しか何が何だかさっぱりわかりません。特にフランス料理店に多いですよね。産地、ワイン名を原語で羅列してあるだけというのが。

そこからお客様との会話が生まれ、ソムリエが本領発揮できる瞬間でしょう、という人もいますが、私は違うと思う。あえて分かりづらくさせるのは高慢な感じがしますし、不親切です。

ちょっと気の利いたところでは、味わいの強弱から組み立てているお店もあります。飲みやすくてフルーティーな赤、渋みが強く骨格のしっかりした赤、など。中には味わいのバランスを図にして視覚的にわかりやすく工夫しているところもある。これはお客様視点に立つとわかりやすく親切ですよね。

ストーリーから組み立てる!?

ワインリストで考えているのは、ストーリーから組み立てるリストです。

水産の仕事をしているとき、ワインからはだいぶ遠ざかっていました。気軽に飲めない事情もありました。でも記憶というのは面白いもので、ふっと思い出すんです。まるで、ずいぶん前に恋をしていた子との楽しかったワンシーンのように。

ワインにはそういう記憶の喚起力が備わっています。

まず、リストに挙げたいのは、そんな感情に訴えるワイン。古い記憶を呼び起こしたり、今という瞬間を忘れがたいものにしたり。だからワインリストには、フルーティーな味わいの赤であっても、皆でワイワイ楽しめるようなワインと、初恋の喜びをひとり噛みしめるようなウキウキしたワインと、分けていきたいと思います。

「これはどんなワイン?」というお客様との会話も、フランス語の羅列だけのメニューを介するより、より豊かな心の交流ができるのではないでしょうか。

森の音楽会

イタリア料理店に勤めていた時、ミュージシャンの方を呼んで、ライブをやったりしました。演奏スペースは広くないので、多くてもトリオまででしたが、生演奏というのはやっぱり、良いですね。演奏する人の熱量が、伝わってきます。

それを目当てに来て下さるお客様もいました。

マジシャンを呼んで、テーブルマジックをしてもらったこともあります。これも面白かった。各テーブルを回ってもらうのですが、各テーブルで大歓声です。

一軒家レストランの庭で、ライブパフォーマンス

構想レストランでも、そんなイベントをできないかなと考えていました。たとえば、「森の音楽会」なんてどうだろう。立地は、高尾山の麓、理想通りなら側に小川が流れていて、風が吹けば、木々の揺れる音、鳥の声、虫の音が聞こえるくらい、静かなところに建てます。

森の中、とまではいかないでしょうが、テントを張ってキャンプ出来るくらい、広い庭が欲しい。そのスペースで、演奏してもらうのです。完全予約制なら、極めてプライベートな演奏会です。贅沢ですよね。もしくは、昼間、レストランを開放して、地域の人たちを呼んできて、演奏会場にしても良いかもしれません。場所を提供するのもひとつのアイデアです。

レストランを開放する、というのは、可能性のひとつとして、面白いと思っています。ゲストハウスのような使い方や、貸コテージにも応用できます。オーベルジュを視野に入れてもいいかもしれません。

来店する前からお客様の支持を得るために

経済が悪くなり競争が激化すれば、戦の様相を呈してくる。そう考えるようにしています。最悪を想定して準備しておかないと、命を落とす危険がある。「兵は国の大事なり、存亡の道」です。だから戦う前に勝っておかなくてはなりません。武器は刀や鉄砲ではなく、頭脳。2年前からまだOPENもしていないレストランのサイト作りから始めた目的のひとつは戦う前に勝っておきたかったからです。

リサーチは市場を知るために、とても重要だと改めて感じました。以前も取り上げた「彼を知り己を知れば百戦してあやうからず」。どんな市場に参入するのか、もしその市場に参入した場合、競合店はどんなことをしているのか。「彼」を知ることでやっていいことと、悪いことがわかります。たとえばカルツォーネ専門店は通販においても、実店舗でも圧倒的に数が少ないので、ニッチ(スキマ産業)です。事業として成り立たせるかどうかはそこから考えていけます。

外食産業が行き詰まる理由

また、なぜ外食産業が行き詰まっているのか、その理由のひとつもわかりました。通販サイトと、飲食店のサイトを比較するとわかりやすい。通販は少しでも多く販売するため、より開かれた凡庸性のある言葉づかい、ユーザー目線でわかりやすいデザイン、構成を考えようとしているお店が大半。

対して飲食店では、サイトを訪れてもどこがどう他のお店と違うのか、何が売りで、誰に向けて発信しているのか、わからないことが多い。地元のお客様だけがターゲットで、規模は小さく、地域に超密着したお店で、あまりたくさんのお客様に来ていただかないようにする戦略ならば良いのですが。そうではないでしょう。

発信力をつける

逆に言えば、そのお店の魅力、想い、誰に向けてのものなのか、それをきちんと発信していければそれだけで成功する確率は高まるかもしれません。いまやスマホの普及で、老若男女、多くの人がインターネットで情報を得る時代です。これからますます、利用する絶対数は増えるでしょうし、生活に密着してくるでしょう。経済が悪くなれば、お店選びも失敗したくありませんから、どこに食事に行こうかというときにもお客様は入念に下調べをするはずです。

私も経験があります。大事に思っている人の誕生日で、普段とは違うところでディナーしたいなと思うとき、かなり調べました。でもインターネットだけでは分からないことも多くて、実際に訪れてがっかりしたこともしばしば。

真の情報を得ていくには、数多く足を運んで、自分で経験していくのが一番ですが、入り口はやはり、インターネットになります。

大義の重要性

もうひとつ気になったのは、大義。吉祥寺で「街の資産になる」という大義をもってやられているお店がありました。このお店は単純に美味追及のお店よりも、お客様の支援は集まるでしょう。素晴らしい大義をもってやられていると思います。

こうした大義を持つお店はとても少ない。美味追及が圧倒多数ではないでしょうか。その先に何があるのか?と思います。人口70億人を超え、地球が賄える資源は枯渇寸前なのに。同じ美味追及でも、捨てるような食材を洗練されたレストランの料理に、というコンセプトならば価値があると思いますが、たとえば絶滅危惧種をわざわざ扱って、その希少性を売り物にしたりする美味追及も少なくない。

そういうことがお客様に支持される時代ではなくなるのでは?と考えています。

目次