レストランをするなら、石窯は導入したい。なぜなら、差別化できるし、石窯料理が好きだから。
「好きでやると失敗するぞ」と上司にいわれたことがあり、それは真実だと思います。だったら、成功してからやればいい。忘備録として、修行すべきことをメモしておきます。
石窯ナポリピッツァのお店
大学生の頃、アルバイトしていたのは石窯ナポリピッツァのお店でした。
その近所に住む友達が、旨いピザ屋があるということで食べに行ったのです。今でもよく覚えています。洒落た一件家レストランで、中央にドンと石窯を備えてありました。2階席もあって、そこはカジュアルなバーの雰囲気です。テーブルは6卓。BGMはビートルズのカバーソングでした。Get Backのレゲーヴァージョン。私はビートルズが大好きでしたから、それだけで嬉しくなりました。
ナポリピッツァを食べたのはその時が初めてです。定番のマルゲリータ、マリナーラ、クアトロフォルマジオ。男3人で、感激しながら食べてました。
店長との出会い
そこの店長はとても気さくな方で、学生の私たちとも楽しそうに話します。クアトロフォルマジオを頼んだのは、店長のすすめでした。これ絶対うまいですよ。と自信たっぷりに言うんです。
私がカジュアルフレンチレストランで働いていたというと、店長はそこを知っていて、感心しました。社員教育が非常に厳しいことでちょっと有名だったからです。今の時代にはないかもしれませんが、普通にどつかれましたね、胸ぐら掴まれて至近距離でどなられました(笑)その時、共にピザを食べに行った友達の一人は3日もたず辞めてしまったくらいです。客席に聞こえるくらいの怒声で、怒るんですから、ちょっと異常です。
髪はオールバックにして、目は細く鋭く、忙しい時の鬼気迫る気迫は忘れません。
でも、私はその職場が楽しかったですね。その上司のおかげで、怖い思いもしましたが、私はサッカー部でもっと怖い監督をしっていましたし、耐性がありました。そして、店長が怖ければ怖いほど、スタッフは皆、仲が良いのです。年齢関係なく、夜中まで騒げて経験は貴重でした。続かない人が大半ではあるものの、その分、残った人達との絆は深かった。
上司は鬼になるべきか否か
それに、私は見ていました。本棚に『上司が鬼とならねば部下は動かず』や『鬼上司』というタイトルの本が並んでいたのを。
会社という組織では、誰もがやりたくないことをやらなくてはならない役割の人がいます。部下を率い、スタッフの生活を支え、お客様に迷惑をかけないようにプロ意識を持って仕事をする人に、厳しい人は多い。遊んでるわけではありませんからね、当然だと思います。
利益を上げるためには、自分が鬼になるしかないと考えていたのだと思います。
「もう一度、働きたいです」
話を戻すと、私はその石窯ナポリピッツァのお店がとても気に入って、その場で、「働きたいです」と言ったのでした。ただ、大学4年に上がる頃のことで、働けるのは約1年間。お店にとっては、戦力にならないのですが、後日履歴書を持って訪れると、心よく採用してくれました。今から考えると、店長にとってはボランティアです。シフトも、毎日入れるわけじゃない。本当に有り難いですね。
さて、レストランの開業を構想している今、私はもう一度、このお店で勉強させてもらいたいことがあるのです。それは、石窯ナポリピッツァについて。私もナポリピッツァは色々なところへ食べに行きましたが、私の知る限り、最もおいしいのは、ここの店長が作るピザです。贔屓はもちろんあります。でも、ここまで研究しつくされたナポリピッツァはない。
カルツォーネを看板メニューにするなら、外せません。きちんと資金作って、無償で働けるようになったらすぐにでも修行に行こう。
どんな困難も乗り越えていく覚悟はあるか
レストランの構想を引っ提げて「もう一度、勉強させてほしい」とお願いに行こうと思っていたのですが、先日、たまたまその店長から電話がかかってきました。かけ間違いでしたが、事のついでに、勉強させてもらえないかお願いすると「君ならいいよ」との答え。
本当に有り難いことです。
「でも教えるなら、哲学から教えないと。簡単なものじゃないからな」
私もそれを望んでいました。簡単なものじゃないほど、いい。だから、感動するほどのピッツァが作れるんだ。私が学びたいのも、誰でも理解できることではありません。誰もが行きつけないところへ、行きたい。
これも、縁。巡りあわせなんだと思います。決意すると同時に、チャンスも縁も巡ってくる。同時に、乗り越えるべき壁も、危機も、あるのでしょうが。何か、新しいことを得ようとすると、必ず何かを手放さなくてはいけないといいます。吐き出さないと入ってこない。捨てないと、望むものは手に入らない。
耳に心地よいことばかり語られているものを、あまり信用しないように、と師から教わりました。良いこともあれば、良くないこともあり、その良くないことを受け入れる覚悟がないと、困難を乗り越えるべき壁と認識できません。
困難はつきものなのです。私の場合、本職で結果を出しながら、どう折り合いをつけていくか。独立開業資金をどうやって捻出してくるか。自分の欠点と向き合い、どれだけ器を大きくできるか。行きたい場所へ確実に行くには、そうやって立ち向かう姿勢が必須かなと思っています。そんな時、勇気と元気をもらうのは、漫画『ONE PEACE』